サンゴのやわらかい部分(ポリプ)を食べるチョウチョウウオの仲間のうち、特に3種類が白化現象で死亡しやすいサンゴを好んで食べていることが分かった。国立研究開発法人水産研究・教育機構が5日、研究成果を発表した。同機構は「地球温暖化の加速で、これらのチョウチョウウオの生息数が大きく減少する可能性がある」と指摘。サンゴ礁の生物多様性を守るために、サンゴの種類もバランスよく守るべきと訴えた。
チョウチョウウオはサンゴ礁海域に生息し、ダイバーなどに人気が高い観賞魚。同機構は2017年から4年間、サンゴのポリプを食べる7種類のチョウチョウウオについて行動を観察した。
好みはチョウチョウウオの種によってさまざまだったが、このうちヤリカタギ、ハナグロチョウチョウウオ、ミカドチョウチョウウオの3種は、白化現象で死にやすいとされるテーブル状ミドリイシと散房花状ミドリイシを好むことが分かった。
国際自然保護連合によると、特にヤリカタギの生息数は近年減少しつつあり、絶滅危惧種と判定されている。同機構は「研究の結果を考慮すると、サンゴの白化現象によって、ヤリカタギの生息数現象が加速する可能性が考えられる」とした。
他の4種は白化現象に対する耐性が強いとされるサンゴを好んでいたが「海水温上昇が継続することで、耐性が強いサンゴでも死亡のリスクが高まる可能性があり、予断を許さない状況」と警鐘を鳴らした。
一般的に、サンゴ礁の保全やサンゴ再生には枝状のサンゴなどが対象となることが多いが「7種のチョウチョウウオは枝状ではないサンゴのポリプを好んで食べており、さまざまな形のサンゴを保全・再生する必要性が示唆された」と強調した。