文化とは生き方である。本欄で紹介した言葉だが、先日、上皇后陛下のお姿に、日本の文化を見る思いがした◆上皇后陛下は10月20日、86歳の御誕生日をお迎えになられた。宮内庁によると、上皇后となられた後も、沖縄慰霊の日、広島・長崎原爆の日、終戦の日、各被災地に対してもお変わりなく祈られ、常に寄り添っていらっしゃるという◆ただ5月以降、原因不明の微熱が続かれ、乳がん手術後のホルモン療法の影響による左手指のこわばりも見られるそうである。日本人作曲家の曲目のピアノ練習を楽しみになさっておられたというから、さぞ不自由をお感じのことと推察される。しかし、上皇后陛下は次のようにお受け止めなさっているという◆「これまでできていたことは『授かって』いたもの、できなくなることは『お返し』したもの」(産経新聞)―。数多の先人たちが人とは何かと問うてきた。あるいは「カミの分霊」であり、あるいは「小宇宙」である、と。いずれにせよ、人は、人を超えた大自然に抱かれている「何か」である◆上皇后陛下のお受け止めは如何なるお心によられるのか。少なくとも、我々が立脚していながら決して自由にはできない歴史や言葉に深く根ざす「伝統」にあることだけは、間違いなかろう。 (S)