【視点】勝負の年末年始、感染抑止を

 八重山で新型コロナウイルスの新規感染者が23日から1週間連続して確認されており、県立八重山病院は「市中感染が始まっている」との認識を示した。このまま感染者数が増加すれば医療崩壊が起きかねないと懸念し、年末年始は飲み会などを避け、静かに過ごすよう求めている。住民も「勝負の年末年始」だと意識して感染予防対策に努めてほしい。
 石垣市の中山義隆市長は28日の仕事納め式で「今年を振り返ると、世の中の話題は新型コロナ一色だったように思う」と述べた。
 「濃厚接触」「3密」「ロックダウン(都市封鎖)」「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」「クラスター(感染者集団)」、さらには最近の「変異種」まで、コロナ関係の耳慣れない言葉が、気がつくと日常用語になっていた。
 1月に中国武漢で「新型肺炎」の発生が報道されたころは小さなニュース扱いだったが、疫病は瞬く間に全世界に広がった。28日現在、世界の感染者数は8083万人に達し、来年早々にも1億人を超えるとの見方がある。
 コロナは世界情勢にも影響を与えた。コロナの発生国である中国は、強制的な国民の移動制限などでいち早くウイルスを抑え込んだと宣言。ワクチンも国産化し、統計では主要国の中で最速の経済回復を果たしつつある。「マスク外交」「ワクチン外交」などを背景に国際的な存在感も強めた。
 一方、超大国・米国は今や1900万人もの感染者を出す最大の被害国になり、死者数も30万人超に達した。新型コロナを「中国ウイルス」と呼び中国批判を強めたトランプ大統領だが、止まらない感染拡大に対する国民の不信が増大し、11月の大統領選では再選を果たせなかった。米中で明暗がくっきり分かれた。
 日本はどうなるのか。菅義偉首相が「ウイルスには年末年始はない」と述べたが、年が改まっても疫病との戦いは続く。
 欧米や中ロが次々とワクチンを開発したが、日本ではいまだ国産ワクチン実用化のめどが立たない。米製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの供給を受ける方針だが、外国で効果があるワクチンが、日本人の体質に適合する保証はない。ワクチンが変異種に効果があるかも不透明だ。
 そもそも、ワクチンの供給を他国に全面的に依存することは、今後の安全保障や外交を考えても得策ではない。国産ワクチンの開発が遅れている現状は、残念ながら、日本が世界の中心から大きく立ち遅れている現実を示しているのではないか。
 沖縄の状況は相変わらず厳しい。離島医療の脆弱さが指摘される中、住民は自己防衛の意識を常に持ち続ける必要がある。特に年末年始は医療体制が手薄になるが、帰省者が感染地からウイルスを持ち込む可能性は高まる。こうした状況を受け、石垣市は例年1月4日の成人式を延期、賀詞交歓会を中止する方針を決めた。
 全国的な「第3波」到来後も八重山は比較的落ち着いた状況が続き、散発的に発生する感染者も、沖縄本島への渡航歴がある人がほとんどだった。しかし最近は感染源が不明なケースが増え始め、状況は一変したと言っていい。
 市は帰省者に対し①帰省10日前から発熱、せきなどの症状があった場合、検査が陰性でも新型コロナの可能性があるため、帰省は極力控える②帰省2週間前から、忘年会など大人数の会合への参加は極力控える―ことを呼び掛けている。
 帰省後の注意点としては①家族以外の飲み会は絶対に控える②高齢者とは家庭内でも、できるだけ距離を取る―の2点を求めている。
 たとえ自分が感染するか、感染の可能性がある状況になっても、他人、特に弱者には絶対にうつさない。そんな決意と優しさを持ちたい。

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