石垣市平得の「種子取祭」(主催・平得公民館)が1月31日午前、多田御嶽と大阿母御嶽(ホールザーオン)で行われ、関係者らが今年の五穀豊穣と住民の繁栄・無病息災、新型コロナの早期収束を願った。今年はコロナの感染拡大防止のため奉納芸能などは中止されたが、多田御嶽の神事には御嶽関係者、神司、公民館役員に加え、平得の老人会、婦人会の各会長も初参加。神司や地方(じかた)での世代交代もあり、新年にふさわしい祭事となった。
平得の種子取祭は、五穀の種子伝来の地とされる真栄里の多田浜海岸にある多田御嶽で午前7時半過ぎから、神司らによる五穀豊穣、住民の繁栄・無病息災、コロナの早期収束を願う神事が執り行われた。
その後、平得公民館前から大阿母御嶽まで、地方による「平得弥勒(みるく)節」に合わせて、公民館役員らの掲げた山頭を先頭に神司4人が列をなして移動し、山頭と五穀種子を奉納した。
波照間督正館長は「年始め最大の行事であり、夏の豊年祭へとつながる大切な神事。後継者育成の意味もある。中止は考えず、いかにしてやるかを考えた」と強調。
「地域の方々と一緒にできなかったのは寂しい限りだったが、マスクを着用して遠くから見守ってくれている方もいて有り難かった」と感謝した。
地方という大役を初めて務めた新城康隆さん(35)は三線歴32年。「先輩方の理解とサポートのお陰で弾けた。きっかけは大阿母御嶽の神司、荻堂久子さんで、『唄とその意味を伝える。そうすればあなたが次につなげられる』と声をかけてくれたこと。(演奏の)最後は感極まってしまった」と振り返った。
高齢だった先代からの世代交代でもあり、「今後は仲間を作り、一緒に学ぶ後輩も集め、神事・行事を担える人材になりたい」と笑顔を見せた。
多田御嶽の神事に初参加した老人会の新本信市会長は「やっぱりあの場所は神聖な気持ちになる。コロナが早く収束するよう心から祈った」と話した。
平得の種子取祭は、琉球王府時代の八重山での最高神職の称号「ホールザー(大阿母)」の初代、多田屋遠那理(ただやおなり)の故事にちなむ行事で、毎年、両御嶽を中心に行われている。