石垣市で高齢者の新型コロナウイルス集団接種が順調に進んでいるのは、沖縄本島で接種が本格化する前、石垣市がいち早く接種体制を構築し、県医師会(安里哲好会長)などの支援を取り付けたことが背景にある。
ワクチンの早期接種完了は中山義隆市長の強い意向で、市は4月、八重山地区医師会を通じ県医師会に協力を要請。県医師会は離島である石垣市の医療体制が手薄であることを考慮し、理事会で支援を組織決定した。県医師会が接種業務を支援している市町村は石垣市だけだという。
県医師会は本島の医療従事者らに石垣市への支援を呼び掛け、応じた中には県立八重山病院の院長経験者など、八重山にゆかりがある医療従事者も含まれるという。県看護師会、県薬剤師会も同様に医療従事者の派遣を決めた。
集団接種は5月17日スタート。本島の支援チームは同21日から石垣市に入っており、派遣人数は6月末までに延べ61人に及ぶ予定。本島から支援を得たことで接種は加速し、高齢者接種率は2日現在で6割を突破、接種人数は1日最大1200人を超えた。
県内では全市町村で接種が始まっているが、県全体の接種率は1日現在、1回目14・4%、2回目1・5%にとどまっている。
八重山地区医師会の上原秀政会長は、本島からの支援について「地区医師会は県内でも最も規模が小さく、集団接種に対応できるか危ぐしていた」と感謝する。
一方、県は市町村の接種業務を補完するため、6月中旬から本島2カ所に大規模接種会場を設置する方針を決めた。玉城デニー知事は5月末、県医師会に協力を要請し、安里会長は応じる考えを示した。
石垣市の高齢者集団接種は今月末に終わるため、大規模接種会場の運営が開始されても、本島から市への医療従事者派遣に大きな影響はないと見られている。
ただ石垣市で7月以降に予定される64歳以下の一般向け接種に関しては、本島から支援を得られるかは決まっていない。県医師会などの派遣が終了した場合、市は地区医師会など、地元医療従事者の支援を仰ぐ考え。
ワクチン接種は感染拡大防止の「切り札」とされる。県医師会の宮里達也副会長は「石垣市では感染が急速に拡大しているが、高齢者施設でのクラスター(感染者集団)は発生していない。高齢者施設で早期にワクチン接種を開始した効果だろう」と指摘。接種作業の加速で今後、石垣市の感染拡大が抑え込まれるとの見通しを示した。