【視点】習氏演説 中国への疑念強めただけ

中国共産党の創建100年を記念する祝賀大会が1日、北京で開かれ、演説した習近平党総書記(国家主席)は、台湾統一が「党の歴史的使命」と述べた上で「いかなる台湾独立のたくらみも粉砕する」と強調した。
口先では「平和的な統一」という言葉を使ったものの、演説の内容は台湾への直接的な脅迫にほからなない。台湾で対中政策を主管する大陸委員会は「わが政府は国家主権と台湾の民主主義・自由を守る」と即座に反発した。
台湾と一衣帯水の仲である沖縄県民にとって、台湾有事の可能性は死活的な問題だ。台湾に対し、強大な軍事力や経済力をたてに一方的な圧力を強める中国の姿勢は、到底容認できるものではない。
主要7カ国首脳会議(G7)の共同声明でも台湾海峡の平和と安定の必要性が盛り込まれたが、習氏の演説内容からは、国際社会の懸念に耳を傾けようとする姿勢は全く感じられない。
むしろ、新疆ウイグル自治区や香港などの人権弾圧を念頭に、国際社会の対中批判が強まっていることに対して「偉そうな態度の説教は絶対に受け入れない」と開き直った。
さらに「われわれをいじめ、抑圧し、奴隷にしようとする外部勢力を中国人民は絶対に許さない」と、自らが被害者であるかのような言辞を弄した。開いた口がふさがらない。
中国が日本や欧州との関係で、戦争や植民地化など苦難の歴史を経験したことはまぎれもない事実だ。しかし21世紀の現在、軍事力や経済力が逆転すると、今度は自らが抑圧者となって国際社会の平和をかき乱している。習氏の演説には、その自覚が全く感じられない。
石垣市の尖閣諸島周辺では、中国海警局の船が百数十日も航行を続けており、周辺に出漁する地元漁船の操業を、これ見よがしに妨害している。友好国として平和的な外交や対話で問題を解決しようとする態度ではない。問答無用で八重山の漁業者を尖閣周辺から追い払おうとする行為である。
習氏は演説で世界一流の軍事力実現に意欲を見せ「強力な力と手段で国家主権と安全を守る」と誓った。中国が尖閣、台湾、南シナ海で周辺諸国と軋轢を生じている現状を考えると、この言葉も露骨な脅しのように響く。
要するに中国共産党100年に当たっての習氏演説は、沖縄県民に何の共感も呼び起こさず、かえって中国という国家への疑念と不安をいっそう強めただけだ。
中国の国力は既に日本を追い抜いたが、その発展は米国も射程距離に入っているとされ、近い将来「世界一の軍事・経済大国」となる可能性も大きいとされる。本来なら世界中の賞賛が捧げられてしかるべきだが、日本本土だけでなく沖縄県民の間でも、そのような雰囲気は全く感じれない。中国の自業自得と言うべきだろう。
県議会では石垣市区選出の大浜一郎氏が尖閣や台湾問題を挙げ、玉城デニー知事に中国の横暴を許さないという主体的メッセージを出すよう迫った。
しかし、知事は「平和構築のため検討する」と述べただけだった。沖縄に多数の観光客を送ってきた中国との関係悪化を懸念しているのかも知れないが、沖縄を取り巻く厳しい国際情勢を、どこまで理解しているのか疑問である。

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