【視点】9・11テロ20年 激変した世界

 米国が9・11テロから20年の今年、アフガニスタンからの撤退を余儀なくされたのは、国際情勢の変化を物語る象徴的な出来事だ。中国はもはや、中東での戦争での片手間に対処できるような存在ではなくなったということだ。
 そのことは、70年間の平和を謳歌してきた日本人も徐々に実感し始めている。中国は自国中心の巨大経済圏「一帯一路」で、インフラ整備をえさに世界各国への経済的影響力を強め、南シナ海の支配を求め、台湾に手を突っ込もうとしている。
 さらには尖閣諸島周辺で動きを活発化させ、沖縄に対する領土的野心を隠そうともしなくなった。日本にとって中国はかつてのソ連以上の脅威となり、国民が悠然としていられる時代は過ぎた。
 冷戦期から冷戦直後にかけ、米国が「世界の警察官」を自認していた時代には想像もできなかった事態だ。結局、9・11テロが中国やロシアといった権威主義的な国々に対する米国の抑止力を弱め、現在の国際情勢を形作る発火点になった、と言えるかも知れない。
 「テロとの戦い」は当時、多くの米国民を駆り立てるスローガンだった。アフガン、イラクでの民主政権成立は、当時の世界での「自由の勝利」を印象づけた。だが現在の国際社会で起こっていることは全く逆の流れだ。これこそ歴史の皮肉かも知れない。
 9・11が変えた世界は、さらにぐるりと一回転した。米国にせよ同盟国の日本にせよ、立ち止まることなく、新たな脅威を見据え続ける必要がある。

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