【視点】自民総裁選 3氏、地方に熱い思い

 次期首相を決める自民党総裁選は8日告示され、石破茂元幹事長(63)、菅義偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)の3人が立候補を届け出た。14日投開票される。所信表明の演説会では、3人とも地方重視、東京の一極集中見直しに言及した。それぞれに沖縄との関係が深い3人でもあり、誰が当選するにせよ、沖縄や離島の振興に力を発揮する新政権の発足に期待したい。
 石破氏は地方創生担当相の経験があり、選挙で何度も来県するなど、沖縄での知名度も高い。
 所信表明では「食料、エネルギーをつくり、出生率の高い地方が滅んで、東京に人、物、金が集まる。そういう日本は持続可能か」と問いかけた。「東京の負担をいかに減らすか、地方にいかに雇用と所得をもたらすか。地方創生にもう一度全身全霊で取り組む」と誓った。
 総裁選のスローガンには「納得と共感」を掲げ「成し遂げたいのはグレートリセット。もう一度この国の設計図を書き換えていくことだ」と語った。安倍政権に批判的な党員の支持を集める可能性がある。
 菅氏は内閣で基地負担軽減を担当し、歴代知事との折衝なども含め、沖縄政策の司令塔として最前線で活躍してきた。県内の事情に精通し、人脈もある。
 所信表明では「自助・共助・公助、そして絆」をスローガンに掲げた。「横浜市議時代も、国会議員になってからも、日本のすべての地方を元気にしたいという気持ちが脈々と流れている」と強調した。
 秋田県出身で、苦学の末に政治家を目指した自らの経歴を「地縁血縁のないゼロからのスタート。50数年前に上京した際に、今日の自分の姿は全く想像することもできなかった」と振り返った。「私のような普通の人間でも、努力をすれば総理大臣を目指すことができる。まさにこれが日本の民主主義ではないか」とも語った。
 歴代首相も含め、世襲議員が当たり前のようになった昨今、実力だけでのし上がった政治家は、逆に新鮮な印象を与える。東北の出身であることも地方から親近感を抱かれそうだ。
 岸田氏は沖縄担当相、外相などを歴任し、基地問題をはじめとする沖縄政策に深く関わった経験がある。沖縄相在任中、日本最南端の波照間島を訪れたこともある。
 所信表明では、デジタル化やテレワークの進展に触れ「東京や大都市にいなくても、働くことができる。情報が得られる。医療や教育が受けられる」と指摘。「過度の東京や大都市への集中は、感染症との戦いにおいても問題だ。そういった意識が広がっている今こそ、地方にとってのチャンスが巡ってきた」と訴えた。
 スローガンには「分断から協調へ」を掲げた。「政治の『聞く力』のエネルギーを実感した。多くの国民の声を丁寧にしっかり聞き、政治のエネルギーに変える」「チームの一人ひとりを輝かせるリーダーを目指したい」と述べており、地方の声なき声をも吸い上げる、ボトムアップ型のリーダーシップを期待できるかも知れない。
 21世紀は、地方の可能性が最大限に発揮される時代であるべきだ。そうでなくては経済停滞や少子高齢化など、日本の長期的な凋落傾向に終止符を打つことはできないだろう。次期首相候補である3人から、地方への熱い思いをうかがわせる言葉が聞けたことは心強い。

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