【視点】「分配」の前に成長戦略を

 国民民主党は10年間で150兆円を支出する積極財政、所得再分配機能回復の観点から金融所得課税の強化、維新は全国民に最低限の生活に必要な金額を支給する「ベーシックインカム」導入、所得税や法人税減税を主張している。
 社民党は所得税の累進課税強化、れいわ新選組は超富裕層に応分の負担を求める税制改革などを政策に盛り込んだ。
 現金給付に関しては共産、国民民主、社民、れいわも打ち出している。
 消費税のあり方も与野党の争点だ。自公が消費税税率の見直しに触れていないのに対し、野党はいずれも時限的な5%への消費減税や消費税廃止を訴えている。
 今選挙で「分配」を重視する姿勢は与野党共通だ。ただ野党の政策は、ややもすると大企業や富裕層から富を収奪するイメージが強い。中間層、貧困層への所得移転は最も分かりやすい分配方法だが、行き過ぎた「平等」はジャパニーズドリームを阻害する。格差是正のみを強調する野党の政策からは日本の未来像は見えにくい。
 一方の与党も、分配と同時に打ち出した成長戦略が野党に比べて具体的とは言い難い。野党ほど大企業や富裕層を狙い撃ちする表現はないが、「分配」の財源をどう確保するのかが抽象的で、将来的な消費増税などの余地を残しており、中間層、貧困層の重税感を払拭できていない。
 コロナ禍を別にしても、多くの国民は日本経済の現状が良好とは感じにくいだろう。80年代のバブル期を過ぎると、世界の最先端を走っていた日本企業が次々と凋落し、アジアのトップだったGDP(国内総生産)は今や中国の3分の1程度しかない。少子高齢化の進行も事態を一層深刻にしている。
 分配も大切だが、その前に経済を成長軌道に乗せ、国富を増やすことが重要だ。経済のパイが拡大しなければ、分配も微々たる量で終わってしまう。各党の経済政策に明確な成長戦略があるのか、分配が選挙目当ての大盤振る舞いに終わっていないか、有権者は監視する必要がある。

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