野党第一党である立憲民主党の新代表に泉健太氏が選出された。泉氏は壇上で「47歳の新しい船長が誕生いたしました」と若さをアピールし、党の「再出発」を強調した。40代の新代表がフレッシュなイメージを与えるのは確かだが、要は政策の中身や政治手法であり、旧態依然とした体質を一新しなければ看板倒れに終わってしまう。
代表選では共産党との野党共闘のあり方などが主要テーマになった。泉氏は「単に継続ではなく、しっかり総括しなければならない。その中で今後のことは考えたい」と共闘の見直しを示唆したが、具体策には踏み込んでいない。
衆院選敗北の原因として「ともすれば自民党ばかり見て対抗してしまい、国民への説明、発信が弱くなっていたのではないか」と分析。「『反対』より『推進』というフレーズがしっかり前に出てくるような訴えも必要」と述べた。「何でも反対」と揶揄(やゆ)されるような体質から脱却を目指すべきなのは当然だ。
立憲が政権の受け皿に成長する上で、最も大きな課題の一つが外交・安全保障政策の曖昧さだ。同党は衆院選で「安全保障関連法の違憲部分を見直す」との公約を掲げた。
中国の脅威が増大する中、自民党は日米同盟を基軸に対処する方針を示しているが、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法を見直せば同盟に悪影響を及ぼさないか。立憲の政策には不安がつきまとう。
沖縄問題では、泉氏は米軍普天間飛行場の辺野古移設中止を訴える党の政策を継続する方針だ。だが、これから県外・国外移設を求めて米国と交渉するという姿勢では、普天間飛行場の撤去はさらに遅れる。雲をつかむような理想論だけでは、沖縄県民の苦悩は深まるばかりだ。
立憲は今後も辺野古移設反対の姿勢を崩さないだろうが、本気で政権を目指すのであれば、現実主義に立ち返った政策を求めたい。
泉氏は昭和49年生まれで、沖縄で言えば47年生まれの「復帰っ子」よりさらに若い世代だ。30代、40代の有力政治家は珍しくなくなったが、この世代が国政政党のトップに就くのは初めてである。
戦中や終戦直後に生まれた世代の政治家には、戦争の惨禍をこうむった沖縄に特別な思いを抱く人物も多かった。しかし最近の政治家からは、そうした話もあまり聞かなくなった。沖縄好きを自認する政治家も、リゾート地としての沖縄に惹かれいると話す人が多い。
沖縄が米軍基地の過重負担や、離島であるがゆえの不利性を抱えている現状は変わらない。今後も与野党を問わず、国政の後押しを受けなければ、県民生活の安定は覚束ない。
だが中央政界の世代交代を見ていると、沖縄側もただ情緒に訴えるのではなく、よりドライに基地負担軽減策や、振興策の必要性をアピールする時期に来ているようだ。