【視点】[石垣市長選]安全保障も論議活発

 石垣市は尖閣諸島を行政区域に抱え、陸上自衛隊配備計画も進められており、日本の安全保障に関わる重要な自治体と位置付けられている。市長選に出馬した新人の市議、砥板芳行氏と現職の中山義隆氏は、安全保障問題に関して対照的な政策を打ち出した。
 陸上自衛隊駐屯地は島中央部の平得大俣地区で来春にも開設される見通しだ。今選挙では、もはや自衛隊配備の是非そのものは争点になっていない。しかし砥板氏は、配備の賛否を問う住民投票の実施を公約した。
 配備反対の市民らは有権者1万4000人余の署名を集め、地方自治法に基づいて配備の是非を問う住民投票の実施を市に請求したが、市議会は住民投票条例を否決。現在に至るまで住民投票は実施されていない。
 中山氏は「安全保障問題は一自治体の住民投票にはそぐわない」という立場を堅持するが、住民の署名や議員によって住民投票条例が議会に提案された場合は、議会の判断に従う考えを示している。
 砥板氏は「配備予定地周辺など、配備に反対する市民の不安や懸念の声を住民投票で拾い、民意として国に伝える」と訴える。
 仮に住民投票で配備反対が多数を占めても、配備を止める法的効力はない。だが配備に批判的な革新系野党が市政与党になり、住民投票で反対が多数になれば、市が駐屯地の運用に厳しい条件をつける場面が増えることが予想される。住民投票の政治的な影響は大きいと言えるだろう。
 尖閣諸島問題でも、2候補の意見は大きく割れている。中山氏が実施した尖閣諸島の洋上調査に対し、砥板氏を支える野党は「国際的な緊張を高める挑発行為」と糾弾している。
 中山氏は尖閣諸島の字名を「登野城尖閣」に変更し、島々への新たな標柱設置に向け、政府に上陸申請を継続する考えを示している。砥板氏は標柱設置の必要性は認めながら、他国との摩擦を起こさないよう配慮し、上陸申請は行わないと明言した。
 尖閣諸島の防衛や実効支配強化は第一に国が取り組むべき問題だ。ただ地元として尖閣問題にどのようなスタンスで臨むか、政府に何を要望するかは、今後の政府の施策のあり方にも大きく関わってくる。地元の果たす役割は決して小さくない。
 砥板氏はかつて八重山防衛協会の幹部として陸自配備を推進し、尖閣諸島問題でも政府に積極的な取り組みを求めてきた経緯がある。そのため「保革共闘体制」の構築に当たり、当初は革新層からの反発もあった。
 市長選出馬に当たり、砥板氏は安全保障問題へのスタンスを大きく変更した。砥板氏は、革新系政治家との共闘の中で「視野が広がった」と述べ、保守系政治家としての「進化」を強調している。
 中山氏は安全保障問題を重視し、陸自配備でも基本的に国と協調しながら、配備による生活環境への影響に関しては国に対処を申し入れる考えを示している。駐屯地周辺で計画されていた隊員宿舎建設計画に関し、地元の反対が強いとして断念を求めたのが一例だ。
 石垣市の市長は時として、日本全体の安全保障にも関わる決断をせざるを得ない。バランス感覚のあるリーダーが求められる。

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