【視点】島守る自衛官の確保を

 「石垣市民防災の日」の24日、市主催の大規模な防災訓練が行われ、陸上自衛隊第15旅団も参加した。来年3月までには市内に陸上自衛隊駐屯地が開設される。今後、島内で防災活動を展開する上で、行政機関と自衛隊の連携はより重要になってくる。
 その時に備え、地元に愛着を持つ地元出身の自衛官を育成することは重要な課題だ。自衛隊沖縄地方協力本部によると、在沖部隊で県出身者の割合は約21%にとどまっている。宮崎県は約70%、熊本、鹿児島県は約60%、長崎県は約50%で、沖縄の低さが目立つ。
 自衛隊沖縄地方協力本部は地元自治体と連名で自衛官募集相談員を委嘱し、人材募集に努めている。「自分の島は自分で守る」という意気込みを持つ若者がもっと増えることを望みたい。
 自衛官の処遇は近年改善されており、同本部によると、初任給は警察官を上回る水準になっている。在職中は航空機の操縦士や自動車整備士など、さまざまな資格取得の機会があり、退職後の再就職支援も手厚い。就職先を探している若い世代に、そういった点を積極的にアピールすることも必要だ。
 特に石垣島で駐屯地が開設されたあとは、八重山出身の自衛官が地元で勤務するチャンスもある。地元高校の卒業生は進路先として、自衛官をこれまで以上に有力な選択肢として考慮してほしい。
 自衛隊員の人材不足は県出身者に限ったことではなく、近年の全国的な傾向だ。少子化の影響もあるが、恒常的に定員割れが続いていると言われる。
 今年度の防衛大卒業生のうち、自衛官への任官辞退者は過去2番目に多い72人に達した。日本を取り巻く国際環境がかつてなく厳しい状況になる中、自衛官は生半可な覚悟では続けられない職業であるのも事実である。
 ロシアのウクライナ侵攻で、国連の常任理事国を務める大国が自ら戦争を起こす事態が現実に起こった。米国の圧倒的な指導力で維持されてきた戦後の国際秩序は、今後さらに流動化していく危険がある。
 中国は南太平洋の島国ソロモン諸島と安全保障協定を締結した。協定の内容は公表されていないが、同諸島に中国軍の派遣を認める内容と見られている。
 同諸島が中国の軍事拠点となれば、台湾や沖縄は太平洋側からも中国の軍事的脅威にさらされる。大陸側と2方向から同時に侵攻されるリスクがあるということだ。
 中国は何を狙って着々と布石を打っているのか。県民は、沖縄周辺の不穏な動きをこれまで以上に直視しなくてはならない。
 県出身の自衛官が少ないのは、沖縄の長年の平和教育が影響しているのかも知れない。だが平和を願う心を沖縄から発信するだけで平和は到来しない。それは現在の国際情勢を考えれば自明だ。「自衛隊が駐屯すると島が狙われる」というのは全く逆で、軍事的な抑止力なくして島の安全は確保できない。

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