東西に約千キロ、南北に4百キロの海域に大小様々な島が群在する沖縄県。先史時代より海を重要な生活や生産の場とし、琉球王国時代は交易で繁栄した歴史を持つ。
そんな沖縄沿岸部の海域には多くの遺跡が存在することが想定されている。沖縄県立埋蔵文化財センターでは、ユネスコが2009年1月に発効した「水中文化遺産保護条約」を受け、海底に眠る遺跡の分布状況や内容を把握する作業に乗り出している。
その調査は、根気強い粘りによるものだ。得られた情報を基に遺跡が存在しそうな地域を絞り込み、次に踏査。海岸に石切場跡や塩田の跡、魚垣跡等の生産遺跡を確認できれば、GPSでの位置登録や写真撮影を行う。陶磁器などの遺物が確認できた場合は、付近の海底もあわせて調査し、海底にも同様に遺物の散布が確認できたなら、同じように位置を記録。場合によっては計測や実測を行った上で、撮影となっていく(写真1)。
水中での撮影は防水ケースに入れた普通のカメラを使う。陸上と環境が異なるため、水中撮影に関しての知識や技術が必要となってくるのだ。なお、回収した遺物には、サンゴや貝などが大量に付着しており、そのままでは形や色、文様などが読み取れない。剥がすことが難しく、遺物を傷つける可能性もあるため、薬品と道具を併用しながら少しずつ落としていく。なお、その際に使うのが水で薄めた塩酸である。竹富島沖の海底で発見された沖縄産陶磁器。付着物が多く分かりにくいが、灰色の釉が施されている。沖縄本島で生産された陶器類を積んだ船が八重山諸島で海難事故に遭遇したと考えられる(写真2)。
(写真提供=沖縄県立埋蔵文化財センター。同センター調査報告書第52集「沿岸地域遺跡分布調査概報Ⅱ ~宮古・八重山諸島編~」の記事を再編集いたしました)