中国の習近平国家主席は28日、バイデン米大統領と電話会談し、改めて台湾「独立」に反対を表明。台湾を援助する動きに対し「火遊びは自らを焼き滅ぼす」と警告した。
日米を含む国際社会が台湾海峡の平和と安定を強く訴える中で、中国の最高指導者が威嚇的な言動を続けていることは極めて問題だ。沖縄県民としても中国に対し、いたずらに不安を煽る行為をやめ、地域の未来を守る大国としての責任を果たすよう求めたい。
台湾と地理的に近接し、交流も深い八重山住民は、台湾有事の可能性にとりわけ強い危惧を抱いている。
しかし中国指導部からは、対話や融和に前向きな姿勢が全くうかがえない。むしろ台湾周辺では、大量の中国軍用機がたびたび侵入を繰り返し、軍事的な緊張が高まっている。
県内でも玉城デニー知事をはじめ多くの政治家が「台湾有事は決してあってはならない」と訴え、対話による平和的な解決を訴えている。
だが、台湾有事を起こさせないことが第一目標であるのは当たり前であり、問題はその先の話である。
中国が、この先も台湾に対し威嚇的な姿勢で臨むのであれば、日本は台湾海峡の平和のため、断固たる姿勢で中国に対抗しなくてはならない。その決意を欠いたまま「台湾有事はあってはならない」とオウムのように繰り返すことには何の意味もない。
不慮の死を遂げた安倍晋三元首相が「台湾有事は日本の有事」といち早く明言したことには大きな意義があった。それは特に八重山住民にとって自明であるにもかかわらず、中国に配慮するあまり、責任ある立場の政治家があえて口にできない言葉だったからだ。
台湾有事は容易に尖閣有事につながる。中国の軍事的圧力は今後もさらに強まることがほぼ確実だ。緊迫した状況の中、安倍氏という勇気ある政治指導者を失ったことが今後、沖縄や八重山の平和にどのように影響してくるのか。考えれば考えるほど憂慮に堪えない。
そうした中でも、自民党の石破茂元幹事長らが訪台し、蔡英文総統と会談したことは、前向きな動きとして評価できる。石破氏は会談で、安倍氏の思いを引き継いでいく考えを表明した。
蔡氏はツイッターで、石破氏らの訪台について「第一列島線という重要な防衛線上にある台湾と日本は、今後も連携を強め、インド太平洋地域の平和と安定を守っていかなければなりません」と日本語で強調した。
全くその通りだ。中国が日台連携を「火遊び」と言うのなら、まずは自分こそ、台湾に近い石垣市の尖閣諸島周辺に艦船を派遣し続ける「火遊び」を慎むべきだ。
バイデン大統領は習氏との電話会談で、一方的な現状変更に反対する考えを伝えた。中国抑止のため、日米の緊密な連携は欠かせない。