危うい「超大国」沖縄は対峙を

 中国共産党の第20回党大会で活動報告を行った習近平国家主席(党総書記)は、台湾統一に向け「武力行使の放棄は約束しない」と明言。会場の人民大会堂では、習氏の発言に呼応するように長い拍手が響いた。
 8月には中国が台湾を包囲する軍事訓練を行い、与那国島、波照間島周辺に弾道ミサイルを撃ち込んだばかりだ。沖縄で高まる台湾有事への懸念をよそに、中国共産党指導部は、軍事力を使った威嚇の姿勢をいっそう強めている。
 21世紀の現代、武力で領土を拡張する行為がまかり通るわけがない、というのが日本人の常識的な感覚だった。
 しかしロシアのウクライナ侵攻は、世界がいまだに弱肉強食であり、日本の平和を維持しているのは憲法9条ではなく、日米同盟や自衛隊の抑止力であるという現実を明確にした。となれば、日本経済の衰退が止まらず、米国の軍事力が相対的に弱まる中、これからの世界は「何でも起こり得る」と考えなくてはならない。
 中国共産党大会閉幕直後の23日には新指導部が発足し、習主席は異例の3期目続投となる。中国では昨年から小中高校で習氏の思想が必修科目とされるなど、習氏への個人崇拝はエスカレートの一途をたどる。中国は、14億人の頂点に習氏一人が君臨する独裁国家の様相を呈しつつあると言っていい。
 「中華民族の偉大な復興」「祖国統一」といったスローガンのもと、一人の独裁者に率いられる中国の姿は、1930年代のナチス・ドイツを想起させる危うさがある。
 ナチスは国際協調よりも、独特の世界観に基づいた理念を優先させ、世界を巻き込んだ無謀な戦争に突入した。国内では独裁者の意志が何より優先されたため、国内で歯止めになる勢力はいなかった。
 今、中国に同じ轍を踏ませないことが国際社会の最大の課題だ。従来以上の外交努力と抑止力強化の取り組みが必要である。
 中国が一方的に領有権を主張する尖閣諸島を抱え、台湾にも近い沖縄は、いずれにせよ日本の対中最前線になる。現行の国際秩序を壊し、平和をかき乱す行為は許さないという強いメッセージを、県民の民意として中国に示す必要がある。
 だが県内では、政界やメディアを中心に米軍基地問題だけがクローズアップされ、台湾有事や尖閣問題に対する関心は薄い。9月に再選された玉城デニー知事も、基地反対派に寄り添った発信ばかりが目立つ。
 石垣市は尖閣諸島に標柱を設置するための上陸申請や、尖閣周辺海域での実態調査などの取り組みを進めている。将来的には尖閣資料館の建設を目指す構想もある。地元の自治体として当然ではあるが、本来、それをサポートすべき県の姿がどこにも見当たらないことが気がかりなのだ。
 「反基地」にあまりに偏った言動は、中国に対し、沖縄の民意を誤解させることになりかねない。独裁者が巨大な軍事力を掌握する超大国に対し、甘い思い込みは禁物だ。

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