「お父さんにぼう力を受けています。先生、どうにかできませんか」―。千葉県の小学生、栗原心愛(みあ)さんが学校に提出した悲痛なアンケートだ。幼い心愛さんは自分の命を守るため、懸命に努力を尽くした◆だが、子どもの命を守るプロであるはずの教育委員会も児童相談所も、ずさんな対応に終始し、両親の虐待から心愛さんを救えなかった◆心愛さんの母は沖縄出身で、心愛さんも一時、糸満市に住んでいたことがあり、今回の虐待死事件は県民にも無関係ではない。県内でも依然として児童虐待が後を絶たない。貧困や学力低迷問題など、沖縄の子どもを巡る状況は厳しい◆観光以外に目立った産業を持たない沖縄にとって、人材は最大の資源。だが多くの優秀な若者が学校を卒業後、首都圏に旅立ってしまう。豊かな自然に憧れて沖縄に移住する人も多いが、全国から「子育てしやすい県」として認知されるくらいにならなければ、人材流出は止まらない◆沖縄でも「地域全体で子育てする」という感覚はかつてなく弱まっている。外で楽しく遊ぶ子どもたちの姿も、昔に比べて見かける機会が少なくなった気がする。子どものSОSを敏感に受信できるアンテナを大人が常に立てていなければ、悲劇の連鎖は絶ち切れない。