【視点】「有事」の不安 現実主義で対処を

 「戦争が起こるかも」という沖縄県民の不安が急激に高まっている。最近は新聞やテレビで「台湾有事」という言葉に接しない日はない。台湾は八重山と目と鼻の先にある。八重山住民が災害に備えるのと同じような気構えで、周辺有事の可能性を真剣に検討すべき時代が到来している。
 安倍晋三元首相は2021年12月、「台湾有事は日本有事」と明言し、その発言は沖縄でも賛否を巻き起こした。だが、その言葉が真実だったことは、8カ月後に証明された。
 22年8月、中国は台湾を包囲して行った軍事演習に合わせ、日本のEEZ(排他的経済水域)を含む八重山周辺海域に、数発の弾道ミサイルを撃ち込んだ。これが日本への警告であることは明白だ。
 軍事専門家は早くから、中国が台湾を攻撃する際、八重山に同時侵攻する可能性があると指摘していた。八重山周辺へのミサイル発射は、台湾侵攻を狙う中国にとって、沖縄、さらに言えば八重山も既に標的であることを、中国自身が問わず語りに認めたようなものだった。
 石垣島や与那国島では自衛隊配備が進んでおり、県内の基地反対派は「島に自衛隊がいなければ攻められない」と反発している。
 だが石垣島や与那国島が無防備のままであれば、中国から見た場合、無血占領できる可能性が高いということだ。中国はより容易に、八重山侵攻を決断するだろう。
 島に自衛隊の駐屯地がなく、民間施設だけであれば攻撃されないという理屈も成り立たない。ウクライナを侵略したロシアが学校や病院を容赦なく攻撃している現状を見れば明らかだ。そもそも他国に攻め込むような国に、国際法の順守を期待することもできない。
 「中国が台湾に侵攻しても、日本は介入せず、中立を保つべきだ」という意見もある。だが中国が最初から沖縄攻撃を想定しているのであれば、中立という概念は成り立たなない。
 安倍氏が危惧した通り、台湾有事において日本は当事者であり、傍観者では有り得ない。中国が一方的に「台湾の一部」と主張している尖閣諸島も八重山に含まれることを考えれば、台湾と八重山への同時侵攻は大いに有り得る話だろう。
 今、一番大事なことは何か。中国が無謀な誘惑に駆り立てられることがないよう、日米がしっかりと備えを固めることだ。これを抑止力と呼ぶ。
 平和外交を進めることも当然だ。相手との対話を継続し、粘り強く平和の大切さを訴えるべきだ。
 戦争が起こってしまえば双方に甚大な被害が出るのだから、極言すればその時点で双方とも「負け」なのだ。そうならないための対話であり、抑止力である。
 だが相手は一党独裁の軍事大国であるだけに、一筋縄ではいかない。有事も災害も、現実主義で対処することが最善の策である。「その時」に国、県、市町、そして住民はどうすべきか。事前の議論がとても大切だ。
 八重山日報社は八重山三市町会との共催で「八重山群島の住民保護計画」をテーマにしたシンポジウムを18日午後2時から、ANAインターコンチネンタル石垣リゾートで開催する。島々の未来を守る議論の一助にしたい。

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