【視点】離島医療の人材難 早急に戦略を 

 八重山で人工透析医療を行っている3病院で医療従事者が不足し、新たな患者の受け入れが困難になっている。人工透析医療に限らず、離島の医療従事者確保は古くて新しい課題だ。八重山でも過去、たびたび専門医が不足したり、不在になったりして住民に不安が広がった。県はこれを機に、離島医療の在り方を再検討すべきだが、地元も医療の危機を招かないため何ができるか、早急に戦略を練る必要がある。
 八重山の人工透析患者は年々増加傾向で、1990年代は100人以下だったのが、現在は約180人に達している。近年の高齢化に加え、肥満や糖尿病といったリスクを抱えた人が多いことが要因だという。
 一方で離島は本土や沖縄本島に比べ人口が少なく、十分な数の医療従事者を確保することが難しい。患者数の増加に医療従事者の増加が追い付いていない。
 八重山病院ではかつて産婦人科医が不足し、一時「八重山でお産ができなくなるのでは」と言われたことさえあった。同病院のその他の診療科でも、たびたび医師不足が問題になってきた。離島のまた離島である竹富町、与那国町の診療所では、医師1人体制という綱渡りの状況が続いている。離島の医療従事者は慢性的に不足している現状だ。
 八重山病院は、看護師などの医療従事者を沖縄本島にある他の県立病院からの人事異動で補充することで、地域の中核病院としての役割を果たしている。
 逆に言えば、人事異動という半ば強制的な形でなければ、離島に医療人材を呼び寄せるのは困難であり、医療人材の不足は離島の宿命とも言える。
 今回の人工透析を巡る問題では、八重山病院が新年度に5人の人員増を要求したのに対し、県病院事業局は1人の増員しか認めなかった。
 八重山病院の篠崎裕子院長は県の対応を批判し、3月末で辞職する意向を示した。松茂良力副院長も既に退職し、県内の医療関係者から「八重山病院はどうなっているのか」と心配する声が上がっている。
 県の手厚い配慮がなければ、離島医療は成り立たない。人工透析を巡る問題が大きくなったことで、県は八重山病院の人員増について改めて調整しているという。県当局の対応を見る限り、離島医療の現状に対する認識が欠如していたと言わざるを得ない。
 一方で、沖縄本島でも医療人材の確保は容易ではない。県に依存し、人事異動という「強権」に頼り、決して多くはない数の医療従事者を本島と離島で奪い合うだけでは、離島医療の真の充実は望めない。離島の自助努力も求められている。
 石垣市議会は市長宛てに決議を行い、医療スタッフの移住・定住促進や、将来的な人工透析につながりかねない住民の肥満、高血圧、糖尿病の予防医療に取り組むことなどを求めた。
 離島の側としても、貴重な医療人材に喜んで八重山に来てもらう環境整備を図らなくてはならない。住民が自覚を持ち、積極的に健康づくりに取り組む雰囲気も醸成すべきだ。

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