運転手不足深刻化 タクシー予約受けられぬ事態も

次々と客を乗せ発車するタクシー=29日、ユーグレナ石垣港離島ターミナル

 ゴールデンウイーク(GW)が29日スタートした。新型コロナウイルス禍前のにぎわいが戻り、観光関連業界は落ち込んだ売り上げのV字回復に期待を寄せる。一方で直面するのが人手不足。この時期は観光客の「足」を支えるタクシー業界にとっては特に深刻だ。予約を受けられない事態にも直面し、書き入れ時に頭を悩ませている。(新垣翔太、赤松拓実)

 「GW中は予約でいっぱいですね。売り上げも大きいからなんとか運転手のやりくりをつけてますけど、これ以上はどうなるかな」
 島内のあるタクシー会社。「この時期は一度の乗車で4、5時間の貸し切りになることが多いから、運転手の手配も難しい」と運転手は打ち明けた。
 観光客が押し寄せる離島ターミナルでも60代の男性運転手が「忙しいよ。運転手は60歳以上ばかり。歩合が低いから若い人は入ってこないよね。夜になると、空車はつかまらないかな」。そう言うと、すぐに客を乗せ、走り去った。
 ■運転手ほぼ半減
 沖縄県ハイヤー・タクシー協会八重山支部によると、現在、市内には276台のタクシーが登録されている。1台を2人の運転手で日勤、夜勤と分けて運用するのが理想だが、運転手は市内全体で317人。単純計算でも200人ほど不足していることになる。
 同支部の伊良皆高司支部長は「せっかく予約の電話を受けても、運転手がいなくて断らなければならないことが多く、タクシー業界として申し訳ない」と悔しさをにじませる。
 「コロナ禍でタクシー業界は臨時休業や規模縮小を余儀なくされ、約500人いた運転手は一時約280人まで減った。「コロナ禍で運転手が退職しただけでなく、高齢化が進んで、毎月、退職者が絶えない」と話す。
 ■夜勤を回避
 八重山公共職業安定所(ハローワーク)には、昨年度、タクシー、バス運転手を含めた「輸送・機械運搬の職業」で252人の求人があった。それに対し、求職者は99人。
 運転手5人の求人を出したタクシー会社は「日勤者は採用できているが、酔客相手となる夜勤が敬遠される」と悩みは尽きない。夜勤から日勤に移る運転手も多く、「昼間はなんとか配車できているが、夜は難しい。安定して配車するためには5人以上採用しないと厳しい」と話す。
 運転手の負担軽減のため、クレジットカード対応機器の整備を進め、客が待つ場所まで案内するアプリを導入するなど、運転手に応募しやすい環境整備にも取り組んでいるという。
 同支部は市に働き掛け、運転手の資格取得に向けた補助金を申請したが、予算案は市議会で否決された。「コロナで疲弊した業界は多い。なぜタクシー業界を優遇するのか」という理由だった。
 ■「石垣島全体の問題」
 タクシー運転手に必要な二種免許は、これまで普通運転免許を取得してから3年が必要だったが、2022年の道路交通法改正で1年に短縮された。これにより、早ければ19歳で二種免許取得が可能となった。
 同支部ではこの制度変更を、自動車整備士の資格取得を目指す生徒が多い八重山商工高などに通知したが、卒業生をタクシー会社に呼び込むには至っていない。
 運転手不足が続けば、島の基幹産業である観光に大きな影を落とす。通院や買い物に、ライフラインとして利用している市民への影響も避けられない。
 「これはタクシー業界だけでなく、石垣島全体の問題だ」
 伊良皆支部長は懸命に打開策を探っている。

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