石垣産牛肉の海外輸出拡大に向け、株式会社八重山食肉センター(代表取締役社長・中山義隆石垣市長)は新年度、施設を台湾、シンガポールの衛生基準に適合するよう改築する方針を固めた。補助事業の採択に向けて国と調整している。市畜産課によると、台湾では石垣産牛肉に対する関心が高まっているといい、海外輸出は、新型コロナウイルス禍が明けても苦境が続く畜産業界の起爆剤になると期待する。
同センターは2022年、タイ、マカオへの輸出に必要な衛生基準の認定を受けた。市畜産課によると、石垣産牛肉の海外輸出は23年度でタイに約100㌔、販売額約95万円の出荷実績がある。24年度にはタイに加えマカオにも出荷する予定で、両国で出荷量約200㌔、販売額約190万円を見込む。
石垣産牛肉の輸出拡大に向け、中山市長は昨年、トップセールスのためタイと台湾を訪問。23年12月の市議会では「タイの日本料理の店に財界の要人を招いて石垣牛の試食会をしたが、非常に好評でメニューに加えたいという話なので輸出体制を整えたい。台湾も出荷先としては大変有望だと思う」と報告した。
同課によると農家からも、距離が近い台湾への輸出を希望する声が多い。市が目指している台湾との定期フェリー航路開設が実現すれば、空路に比べコストが安い海路を使って安定的な出荷が実現する可能性も出てくる。
ただ、台湾などの衛生基準では、病畜の疑いがある家畜を、健康な家畜と同じ施設でと畜することはできない。同センターでは現在、両方の家畜を同じ施設で時間をずらしてと畜しており、台湾の衛生基準を満たしていない。
このため同センターは、現在使用されていない旧と畜場の施設を、病畜の疑いがある家畜のと畜場として改築することを計画。専用のノコギリや、皮はぎ器などの機材も導入する。
総事業費は約2億5千万円を見込む。財源には、国が国際的な衛生基準HACCP(ハサップ)に適合する施設整備を補助するHACCPハード事業を導入する予定で、現在、内閣府に事業採択を申請している。事業採択が認められれば6月ごろ施設改築に着手し、12月ごろ完成というスケジュールになる。
同センターが台湾、シンガポールの衛生基準を満たせば、石垣産牛肉が輸出可能な国はタイ、マカオ、台湾、シンガポールの4カ国に拡大する。
市は29年までに出荷量を現在の10倍以上となる約3㌧、販売額を約2127万円にアップする目標を掲げ、肥育農家に増頭を促す方針。
同課の本原弘也課長は「コロナ禍で石垣産牛肉がだぶついている状況もあったが、海外輸出が拡大すれば肥育の活性化にもつながる。ある程度4カ国への輸出が進めば、その先の香港、米国などへの輸出を目指して取り組んでいきたい」と話した。