難病患者の渡航費助成拡充 負担軽減へ、不妊治療に手厚く 石垣市

 石垣市は、島内で治療を受けられない難病患者などが島外の医療機関へ通院する際の渡航費助成制度を今年度から拡充した。航空運賃、宿泊費に対する助成金の上限が大きく引き上げられた。不妊治療に関しては、当事者の声を反映し、特に手厚い助成を実現した。離島の難病患者は治療のため島外に出向かなくてはならないケースが多く、経済的負担の軽減をどう進めるかは「古くて新しい課題」になっている。

 制度が拡充されたのは「市離島患者等交通費支援事業」。対象になるのは指定難病患者、特定疾患患者、小児慢性特定疾病、がん患者、妊産婦(健診・出産)、不妊治療を受ける人(生殖補助医療に限る)などと、その付添人。島外の医療機関に通院する際の航空運賃と宿泊費を上限付きで助成する。
 2022年度までは県と市が財源の半分を負担していたが、23年度から県8割、国1割、市1割の負担割合となったため、市は制度の拡充に向けて助成金を増額した。
 従来は助成金の上限が2往復までで航空運賃、宿泊費共に3万円だったが、23年度からは4往復までで航空運賃6万8千円(1往復当たり1万7千円まで)、宿泊費8万円(1人当たり1泊5千円まで)に引き上げられた。
 不妊治療に関しては、助成金の上限が8往復までで航空運賃13万6千円(同)、宿泊費16万円(同)まで認める。申請窓口の市健康福祉センターによると「不妊治療は通院しなくてはならない回数が多い」という当事者からの訴えや、他自治体の事例を参考にしたという。
 申請は複数回の通院をまとめて行うことも可能だが、通院から6カ月以内に行う必要がある。
 助成制度が拡充される一方で、適用の要件は一部厳格化された。申請の際は島内で治療などが受けられないことを証明する病院の意見書が必要だが、意見書を出せるのは八重山あるいは県内の病院に限定した。
 同センターは「県外の病院が島の医療事情を詳細に把握しているとは考えにくい」と説明している。ただ、経過措置として今年度までは、申請があれば、県外の病院が提出した意見書も受理するという。
 がん治療に関しては、従来は期間の制限を設けていなかったが、他自治体の事例を参考に、基本的には5年間に限ることにした。
 助成制度は、島内で治療が受けられないすべての疾病などが対象になるわけではなく、市が定めるケースに限って適用される。
 同センターによると、助成制度には年間400件ほどの申請があり、今年度の申請は4月だけで約30件。今年度は前年度比でほぼ倍増した約1500万円の予算を確保しており、担当者は「今年度も例年並みか、それ以上の申請があるのでは」と見ている。

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