【視点】自衛隊配備「負担」ではない

 沖縄の日本復帰から15日で51年となった。昨年は復帰50年という大きな節目が全国的に話題だった。今年は石垣島で陸上自衛隊の駐屯地が開設されたことなどを念頭に、沖縄の「基地負担」が増えていると喧伝する報道がある。
 だが、自衛隊の配備は周辺国の脅威や災害から沖縄を守るための政策であり、これを「基地負担」と表現するのはふさわしくない。自衛隊配備は、むしろ県民の安全安心に資する。県民は一方的な報道に煽られてはならず、自衛隊配備の意義に関し誤解がないようにしてもらいたい。
 戦後70年、外国の軍隊である米軍が沖縄に駐留し、基地に起因する事件事故が県民を苦しめてきた。米軍基地の負担軽減が沖縄にとって最大の課題であることは間違いない。
 だが、米軍と自衛隊を同列に考えることはできない。自衛隊は日本の国内法に従い、シビリアンコントロール(文民統制)のもとにある組織である。
 自衛隊の存在を「基地負担」と称するのは、あらゆる軍事力の保持に反対し「基地のない沖縄」を理想に掲げる人たちの主張だ。
 だが現実の国際情勢を見ると、沖縄の周辺では中国が急速に軍事力を拡大し、台湾や八重山の周辺で威嚇的な行動を強めている。今や沖縄を守る軍事力が必要であることは誰の目にも明らかだ。県民にとって真の安心安全とは何か。今「基地のない沖縄」という理想そのものの問い直しが迫られている。
 沖縄は、この半世紀で飛躍的な経済発展を遂げた。かつての辺境の島々は現在、南国の楽園リゾート地に変貌し、本土からも憧れの眼差しを向けられるようになっている。
 それは米軍統治の困難な時代を耐えた先人たちの苦闘と、それに応えた日本政府による巨額のインフラ投資のたまものだ。沖縄と本土が連携してこそ、沖縄の地の利を生かした振興策を前進させることができる。米軍基地問題だけに焦点を当て、沖縄と本土の対立や分断を図るのは誤りだ。
 玉城デニー知事は復帰記念日にあたってのコメントで、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題に言及し「工事が強行されている」と批判した。沖縄を取り巻く厳しい安全保障環境に関し、県独自の地域外交を展開するとも表明した。いずれも政府との関係強化とは逆行する発言であり、自己の政治的な思惑を優先させた動きに見える。
 復帰から半世紀の節目を経て、沖縄の未来を展望する重要な時期に差し掛かっている。長い目で見て、玉城県政が進もうとしている道が果たして県民の利益になるのか疑問だ。
 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に変更され、コロナ禍は事実上の収束に向かっている。島々は再び観光客でにぎわい始めた。
 沖縄は今こそ経済再生への歩みを確固たるものにしなくてはならない。国と県がいつまでも喧嘩している場合ではない。

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