【視点】台風とミサイル 八重山緊迫

 台風とミサイルの「ダブル襲来」も有り得る状況だ。八重山が緊迫している。
 気象庁によると、先島諸島は31日以降、台風2号の暴風域に入る可能性がある。十分な警戒が必要だ。
 一方、北朝鮮は31日から6月11日までの間にミサイルを発射すると予告した。
 2016年に北朝鮮が人工衛星と称するミサイルを発射した際、ミサイルは先島諸島の上空を通過したと見られている。ミサイルが今回も同じ軌道となった場合、石垣市と与那国町は、台風とミサイルへの対策を同時に進めなくてはならなくなる。
 県危機管理対策本部長の玉城デニー知事は29日、県民向けのメッセージを発表し、県内にミサイル落下が予測される場合は、安全のため屋内に避難するよう呼び掛けた。
 仮に暴風の中でミサイル破片の落下が予測される場合、自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)での迎撃は可能なのか。その前に、PAC3の部隊は正常に展開できるのか。落下地点周辺の住民はどのように避難すればいいのか。Jアラートが鳴っても、大荒れの天候の中で防災無線が聞き取れるかも疑問だ。
 分からないことばかりだが、初めての事態だからこそ、自治体や自衛隊は万全の対策に注力してもらいたい。
 八重山は昔から「台風銀座」であり、毎年のように農作物などに大きな被害が出ている。恒常的な自然災害が避けられない環境にあると言える。
 さらに近年は、中国が侵攻を企てているとされる台湾との距離的な近さから「有事」の際に標的になる懸念も語られるようになった。
 北朝鮮が発射するミサイルの軌道上に八重山など先島諸島が存在するというのは象徴的だ。台風という天災だけでなく、有事という人災の可能性も考慮に入れ、万一の備えを固めなくてはならないのが八重山の宿命になってしまっている。
 住民や観光客が南国の穏やかな生活を満喫するのは一向に構わない。だが頭の片隅では、八重山が置かれている地理的、国際的な環境を考慮に入れる必要がある。
 北朝鮮のミサイル発射予告を受け、浜田靖一防衛相が破壊措置命令を出した。与那国町、宮古島ではPAC3が陸自の駐屯地内で展開されるが、石垣市だけは駐屯地ではなく、南ぬ浜町への展開が決まった。
 南ぬ浜町はクルーズ船の着岸地となっており、地元からはこの場所でPAC3が展開されることに懸念の声が上がっていた。
 今回、ミサイルの発射予告期間のクルーズ船寄港はないため、寄港とPAC3の展開が重なる事態は避けられた。だが、それは偶然の産物に過ぎない。北朝鮮のミサイル発射が続けば、今後同様の懸念が再燃する可能性はある。
 なぜ駐屯地ではなく南ぬ浜町での展開が必要なのかも含め、防衛省や自衛隊からの情報発信が不十分なのは否めない。石垣駐屯地をスムーズに運用していくためにも、自衛隊と住民、地元自治体との意思疎通のあり方に改善の余地がある。

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