新型コロナウイルスが5類感染症に移行して以来、沖縄県では観光客が増えている。これに伴ってか、6月に入ってから石垣市を含む県内で海難事故が目立ってきている。今年度に入って不慮の死亡事故が10日市内で発生しており、石垣海上保安部はマリンレジャーをする際、飲酒、持病や疲労で体調不良のときは入水せず、身の安全を第一とした行動をするよう呼びかけている。(新垣翔太)
この事故は川平平離島付近の海上でダイビング中に70代女性が体調不良となり緊急浮上。市内の病院に緊急搬送されたが、翌11日に死亡が確認された。
沖縄本島では19日、糸満市ルカン礁付近海域でダイビング中の7人が一時行方不明となる事件が発生した。那覇海上保安部はヘリコプターと巡視船などで捜索し、現場付近で漂流している7人を発見。ヘリで全員を救出、命に別条はなかった。うち2人はインストラクターだった。7人は潮の流れに乗って海中を移動する「ドリフトダイビング」をしていたとみられるが、ルカン礁周辺は潮の流れが速く、漁業者でも慎重に航行する場所だという。
海難事故はダイビングにとどまらない。18日、青の洞窟(石垣市桴海)でシュノーケリングやSUPで遊泳していた3人が、SUPが沖合に流されたため、浜に戻ろうとしたが、離岸流の影響で戻れなくなる事故が発生した。石垣海上保安部は、SUPは風や波の影響を受けやすいため、気象海象に注意し、防水パック入り携帯電話などで連絡手段を確保するように注意を促している。
宮古島では10日、SUPに乗っていて与那覇前浜ビーチを出発した3人が西風に流され、ビーチに戻れなくなる事故が発生した。宮古島海上保安部は、怪我人はいなかったが状況によっては人命に関わる重大な事故に至る可能性もあったとしている。
第十一管区海上保安本部(那覇)の安全対策課は今年のマリンレジャーの海難事故が昨年比で増加傾向にあると危惧する。特に観光客と中高年の事故者が多く、気象海象に注意し、レジャー団体には気象海象を注視することと観光客に安全対策の徹底、体調の優れない人に入水を断るように呼びかけをお願いしている。
石垣海上保安部交通課は海難防止のためにマリーナ、漁港、ビーチ、管理されていない海岸などを巡回するパトロールを実施している。海難事故は安全対策を怠っていたり、インストラクターの知識技能不足で発生したりすることも多いといい、海のレジャー前には海上保安庁の総合安全情報サイト「ウォーターセーフティガイド」を確認することを推奨している。同サイトはアクティビティ別に安全情報や必要な装備なども確認できる。
八重山諸島では「八重山SUP協会」が、SUPの急速な普及から、各島々に則した自主ルール、マナー、安全対策に取り組んでいる。同協会は2014年に設立された任意団体で、定期講習会を行い、健全なSUP活動の普及のためのインストラクター認定を発行している。現在加盟数は20店舗越え、30人ほどが認定されている。
SUPインストラクターを認定する組織は全国にあるが、同協会は唯一更新が必要な団体で、更新は1年ごと。ガイドインストラクターに必要な知識技能や体力を継続させ、所属店舗の垣根を越えて情報交換する場になっているという。
5月22、23日には新規と更新講習会が行われ、新規講習生7人、更新講習生9人の参加があった。23日に行われた安全講習会には、市内から警察、消防、海上保安部が視察し、今後連携を取り、安全性を高めていくために連携していくことを確認したという。
同協会の小山豊会長は「SUPは楽しいアクティビティーだが、しっかりと危険を認識できる知識と、回避する技術を身につけて、八重山諸島のサービス向上に生かして」と、この取り組みが広がってほしいと呼びかけた。
石垣海上保安部交通課は、「情報共有をしてそれぞれの専門知識や安全管理の周知していく良い取り組み」を評価した。
市内でインストラクターをしている同協会の会員の一人は「常に命を預かる仕事だから」と同協会の活動の重要性を訴える。
八重山諸島を含む沖縄島しょは、日本の中でも海辺のレジャー活動を目的として多くの観光客が訪れる場所である。レジャーを楽しむ人たちが、安全対策の怠りやガイドの知識不足によって海難事故に遭ってしまうような場所であってほしくない。