県立八重山病院は11日、緊急の記者会見を開き、同院の新型コロナウイルス患者用の病床が満床になったと明らかにした。新型コロナ以外の入院治療や検査にも影響が出ており、和氣(わけ)亨院長は「医療崩壊が迫っている」として、警戒を呼び掛けた。
八重山保健所管内の1定点(医療機関)当たりのコロナ患者報告数は、6月26日から今月2日までの約1週間で54・67人。県全体の48・39人を上回り、南部地区に次いで県内2番目の多さとなった。
八重山病院には、11日時点で22人の新型コロナ患者が入院しており、15床ある患者用ベッドは既に埋まった。
和氣院長は、「西病棟」内の45床のベッドを新たにコロナ患者用に使う方針を明らかにした上で「急を要さない入院や治療は先延ばしにしてもらっている。ベッドをこじあけるしかない現状」と説明。患者や家族に理解を求めた。
一方で、職員間でも新型コロナ感染が広まり、現在は医師3人を含む28人がり患。濃厚接触者も22人を数え、医師の一人は「病床はあっても、患者を診れない状況。職員は疲弊(ひへい)している」と漏らす。
診療を縮小した上で、新型コロナに対応せざるを得ない状況が続いていると言い、救急科の竹島茂人部長は「このままでは、自衛隊機を使って急患を沖縄本島まで搬送するケースも考えないと」と危機感をあらわにした。
別の医師は「患者数が激増した『第七波』と、入院を必要とする重症者が多数を占めた『第三波』が合わさったような現状。今までで一番ひどいのでは」と分析。今後は外来や紹介診療が制限を強いられる可能性を危ぐした。
一方で、ハーリーなど大規模なイベントが通常通り実施されたことを受け、和氣院長は「市民と病院で温度差がある。コロナ禍は決して終わったわけではない。病院関係者が戦線離脱し、苦しんでいる状況を少しでも分かって、どう行動すべきか考えてほしい」と訴えた。手指の消毒、マスク着用など基本的な感染症対策を徹底し、「うつらない、うつさない」の理念を持つよう求めた。
また、ワクチン接種についても「重症化を防ぐ効果がある。最後の接種から時間が経ち、効果が薄まっている可能性もあるから、積極的に行って」と求めた。