【視点】離島の国民保護 検討加速を

 台湾に近い八重山諸島では、台湾有事が勃発した場合、中国の標的になるのではという懸念が高まっている。松野博一官房長官は就任後初めて八重山を訪問し、石垣市、竹富町、与那国町の3市町長から、有事の際、住民の避難施設となるシェルター整備の要請を受けた。
 官房長官自ら現地を訪れ、首長から意見を聞くのは、政府が有事の可能性を真剣に考慮し、離島の国民保護に本腰を入れ始めた表れだと受け止めたい。国、県、市町村は今後、有事を見据えた対応の検討を加速させなくてはならない。
 戦争を想定した対応より、戦争を起こさないための平和外交に力を尽くすべきと主張する声もある。当然、平和外交を前提とした上で、最悪の事態が起きた時にどうすべきか、平時から備えを固めておくことが重要だ。どちらか一方に注力せよという話ではない。
 昨年8月、中国は台湾を包囲して実施した軍事演習で、弾道ミサイルを故意に波照間島や与那国島周辺に打ち込んだ。台湾侵攻の際、八重山をも戦域に巻き込む意思を表明したものと受け止めていいだろう。
 台湾侵攻時、日本の介入を阻止するため、八重山の住民を人質にして威嚇しているのだ。事態がそこまで切迫している以上、日本政府や八重山の自治体が、国民保護のために何もしないことは有り得ない。
 有事の際、八重山の住民は島外避難が基本になるが、観光客も含め数万人が即時に避難できるわけではない。島のインフラや秩序維持のため当面、職務として島に留まる人や、避難せず島に残る選択をする人が出ることも予想される。
 八重山では現在、そうした人たちを収容できるシェルターが事実上存在しない。このため竹富町は新築する西表島の大原庁舎、与那国町も新築する町役場の地下に、シェルターを整備する計画を立てている。宮古島市も市総合体育館新築の際、地下にシェルターを整備する方針のようだ。
 石垣市のシェルターに関してはどのような形になるのか不透明だが、いずれにせよ、官房長官の来島で、先島のシェルター整備に向けた動きに弾みをつけたい。
 3市町は住民の島外避難をにらみ、港湾や空港の拡張整備も国に要請している。本来は観光インフラを充実させる観点から求めてきたものだが、今は安全保障上の必要性も増してきている。国の前向きな対応が求められる。
 尖閣諸島を抱える石垣市、日本最西端の与那国町に自衛隊が配備されたことで「自分の国は自分で守る」という日本の意思が示され、抑止力の向上が図られた。
 さらに国民保護計画を充実させることで、離島の隅々まで万全の態勢が構築されていることを内外にアピールできる。逆説的かも知れないが、こうした取り組みこそが戦争を防ぎ、平和を守る最善の道程となる。

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