今年も年明け早々、尖閣諸島周辺で中国公船が領海侵入した。政府が日中関係について「改善基調にある」と強調するが、中国は、尖閣諸島をうかがう姿勢を全く改めていない。それどころか、中国が「百年の大計」として尖閣奪取の計画を進めてきたらしいことも明らかになった。この状況では中国共産党政権が続く限り、八重山住民は今後50年、100年と、軍事大国の脅威に直面する現実を覚悟しなくてはならないだろう。
共同通信の報道によると、中国公船の元指揮官が、尖閣周辺への領海侵入について、日本の実効支配打破を目的に、2006年から準備していた行動だったことを証言した。
元陸将の用田和仁氏は本紙連載で、太平洋進出を目指す中国にとって、尖閣諸島の戦略的価値が非常に高いことを指摘している。尖閣の領有権主張を、単なる無人島の争奪戦と見るべきではない。
中国は数十年という長いスパンで国家目標を追求する国であることが知られている。尖閣奪取も最高指導部によって、国家的事業として周到に練られた作戦であることが浮き彫りになった。「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平国家主席にとって、尖閣奪取もまた、欠かせない道具立てということになろう。
今回の報道で重要なことは、一部でよく言われる「2012年の尖閣国有化が中国を刺激し、尖閣周辺での緊張状態を招いた」という主張が誤りであると判明したことだ。
世界第2位の経済大国、軍事大国として台頭する過程で、いずれにせよ中国は尖閣奪取を目指したのであり、日本による国有化は口実に過ぎなかった。国有化が領海侵入の激化を招いたとする言説は、緊張状態の責任を日本に転嫁するもので、中国の思うつぼである。