【視点】辺野古敗訴 県は対立に終止符を

 米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古の地盤改良工事を巡る訴訟で、最高裁は4日、県の上告を棄却した。地盤改良工事の設計変更を不承認とした県に対し、国土交通相が出した「是正指示」を適法とした福岡高裁那覇支部の判決が確定。県は設計変更を承認する法的義務を負うことになった。
 辺野古移設阻止に向け、県が国を相手取った訴訟は13件あるが、和解や取り下げとなった4件を除き、県の敗訴は7件となった。
 移設を止めるため国を提訴するのは、翁長雄志前知事が打ち出した手法だが、県と国の対立をいたずらに激化させる悪手だった。結局、現在まで県が勝訴した訴訟は1件もなく、県の対抗策はほぼ出尽くした感がある。
 辺野古移設を巡り、県民の民意は長年、反対と容認で大きく分断されてきた。「オール沖縄」勢力の退潮が著しい近年の選挙結果を見れば、それは明らかだ。県は自ら移設反対運動の先頭に立つ姿勢を改め、移設問題の終結を図ることで、県民同士の不毛な対立に終止符を打ってはどうか。
 玉城デニー知事は判決後の記者会見で「私が新基地断念を求める意思に全く変わりはない」と述べた。発言からすると判決に従う可能性は低そうだが、仮に県が判決を無視するのであれば、法治国家の自治体首長として、あってはならないことである。
 判決を批判することは自由だが、移設反対が公約であるという政治的な理由が違法行為の免罪符になるわけではない。
 判決を受け、普天間飛行場がある宜野湾市の松川正則市長は「(普天間飛行場の返還が)大きく動くのではないか」と期待感を示した。移設先である名護市の渡具知武豊市長は、今後の国、県の対応を注視する考えを示した。県は移設反対に拘泥するのではなく、こうした当事者の声も真摯に受け止める必要がある。
 普天間飛行場の返還を一歩でも二歩でも前へ進めるために、今、取り得る現実的で可能な手段が辺野古移設しかないことが、改めて浮き彫りになった。
 辺野古移設反対の声が国政全体を動かすに至らないのは、反対運動が結局、反基地イデオロギーに立脚しているためだ。
 「県内移設では負担軽減にならない」という神話のような固定観念にとらわれ、県や反基地派が移設の妨害を続けることは、国との不和をいたずらにエスカレートさせるだけで、結局、沖縄全体の利益を損なう。何よりも「オール沖縄」県政の約9年間の軌跡が、そのことを事実として示している。
 玉城知事は今月、スイス・ジュネーブの国連人権理事会で演説し、辺野古移設反対を訴える意向だ。これも翁長前知事からの悪手であり、実質的な意味をほとんど持たないことは、既に実証済みである。知事は移設反対よりも、経済活性化や離島振興といった知事本来の仕事に立ち返るべきではないか。

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