離島防衛を想定した陸上自衛隊と米海兵隊の共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」が国内各地で始まった。沖縄県内では石垣駐屯地と与那国駐屯地で共同の指揮所設置などが予定されている。
沖縄・八重山は台湾に近く、尖閣諸島を行政区域に抱える。好むと好まざるとにかかわらず、軍事力を拡大させる中国への最前線とならざるを得ない。政府・自衛隊は訓練を通じて隙のない備えを構築し、沖縄の離島を守り抜く決意を内外に示してほしい。
石垣駐屯地が3月に開設され、半年余りで米軍との共同訓練が八重山でも実施されることになる。県民、八重山住民の自衛隊に対する信頼は厚いが、米軍に対しては強い警戒感を持つ人が多いのも事実だ。「自衛隊が配備されれば米軍も来る」と訴え続けてきた基地反対派は批判を強めている。
ただ、中国の軍事力が強大化した現在、台湾や沖縄で紛争が勃発しても、自衛隊だけで対処するのは困難だ。現実問題として、日本の防衛は米軍との連携を前提に成り立っている。
その意味で八重山を舞台に、離島防衛を想定した訓練を日米共同で実施することには合理性がある。日米の連携を国際社会に改めてアピールできる意義も大きい。訓練の円滑な遂行を望みたい。
石垣市では訓練に反対する集会が開かれ、参加者からは訓練について「沖縄での戦争を想定したものだ」と日米両政府に抗議する声が上がった。
だが、その考え方は誤りだ。沖縄や八重山を戦場にしようとする動きを見せているのは日米ではない。沖縄周辺で異常な領土的野心を増幅させている中国である。
中国に対しては平和的な外交の姿勢を保ち続けるべきだが、外交は強固な抑止力とセットで初めて効果を発揮する。訓練は戦争の準備ではなく、あくまでも戦争を防ぐための準備であることを忘れてはならない。
訓練では陸自のオスプレイが初めて沖縄に飛来し、新石垣空港で患者輸送訓練を行う。だが、県はオスプレイの安全性に懸念があるとして、沖縄防衛局に空港の使用自粛を要請した。
米軍、自衛隊でオスプレイの使用実績が積み重ねられてきた現在に至っても「欠陥機」とレッテル貼りする動きがやまないのは残念だ。
垂直離着陸が可能なオスプレイが、有事や災害の際に威力を発揮するのは確実だ。反基地感情からオスプレイの飛行に反対するのは、技術革新の否定にもつながりかねず、将来的には県民自らの首を絞めることになる。
訓練の実施に当たり、石垣市は、住民の安全確保に万全な対策を講じるよう沖縄防衛局に要請した。石垣市議会は、住民に対する十分な説明がないままの訓練は慎むよう求める意見書を可決した。
訓練は住民生活と隣り合わせでもある。離島を守るため必要な訓練であるからこそ、政府・自衛隊は無用な混乱や誤解を招かないよう、住民生活に最大限配慮する必要がある。