―安全保障問題について聞きたい。台湾と地理的に近い八重山では、台湾有事に対する関心が非常に高い。沖縄本島の住民はともかく、私たち八重山の住民は「台湾有事は日本の有事」だと認識している。この状況を台湾側はどのように見ているか。
「八重山の人たちが心配しているのは、台湾有事というより『八重山有事』だと思う。台湾海峡には常に緊張感が漂っているが、昨年8月までは沖縄に影響が及ぶことはなかった。しかし中国が大規模軍事演習を行い、初めて与那国島や波照間島周辺にミサイルを着弾させた。緊張が以前より高まっているのは事実だ」
「中華人民共和国が設立されて以来、台湾と中国はずっと紛争の種を抱えており、台湾人は常に有事に備えている。地下シェルターを設置し、全国的な防空避難訓練、軍事演習、米国からの武器調達、国防予算増額などにも取り組んでいる。だが、9割くらいの台湾人は現状維持を主張している。沖縄の人たちと同じように『命どぅ宝』の精神で、誰も戦争を望んでいない。むしろ経済発展に力を入れたいと思っている」
「とはいえ最近、東アジアの情勢は大きく変わり、中国、ロシア、北朝鮮という権威主義国家が覇権的な行動を取っている。中国は八重山周辺にも侵入を繰り返している。私は外国人だから口出しはしないが、八重山の人たちは諸外国の動向を注視し、今後どうすべきか、内部で議論していただいたほうがいいと思う」
―中国の台湾に対する威圧を、多くの八重山住民が心配している。沖縄や八重山の人たちに望むことはあるか。
「安全保障に関して台湾が八重山、沖縄、日本政府に期待していることはない。台湾と日本は国交がないし、安全保障の枠組みもない。台湾有事が発生しても、日本は憲法で専守防衛が定められているので、台湾に自衛隊を派遣することはあり得ないと理解している。中国から見ても、台湾だけ相手に戦うなら勝ち目は十分にあると思うはずだ。でも日米を巻き込んでしまうと勝てない。ロシアもウクライナに侵攻したが、NATO(北大西洋条約機構)を敵に回す考えはないはずだ」(つづく)