負担軽減、国際交流に努力 外務省沖縄担当大使に聞く
- 2023/12/22
- インタビュー
米軍基地問題や尖閣諸島を巡る緊張など、沖縄は今年も日本を取り巻く国際情勢に翻弄された。八重山日報社は21日までに、外務省沖縄事務所沖縄担当大使の宮川学氏(60)に、基地負担軽減や国際交流など、外務省が沖縄で力を入れて進めている業務に関して話を聞いた。
―沖縄担当大使とはどういう仕事か。
「外務省は以前、沖縄に事務所を設置しておらず、沖縄での業務は職員が東京から出張して行っていました。現場で日ごろ県民と対話し、在沖米軍施設・区域との意思疎通もやっていくべきということで、橋本龍太郎内閣の時、1997年に沖縄事務所が設置されました。その2年前には米兵による少女暴行事件が起き、当時の厳しい沖縄世論も当然、無関係ではありません」
「任務は主に3つあります。まず、在沖米軍から派生する騒音、環境問題、事件・事故を含め負担を可能な限り軽減しつつ、日本の外交・安全保障にとって重要な日米同盟を円滑に機能させること。その下支えをしています」
「2つ目は沖縄の若い世代の国際交流をお手伝いすること。沖縄の高校生や大学生20~40人を毎年、米国ワシントンやニューヨークに8日ほど派遣し、政府関係者、シンクタンク、同世代の学生と意見交換してもらうTOFU(アメリカで沖縄の未来を考える)プログラムがあります」
「中学生が米軍施設内において同世代の子どもと交流を行い、日米の希望者で宿泊体験もする日米交流事業(SEED)も一例です。今年は日本とASEAN(東南アジア諸国連合)との友好協力50周年に当たり、3月にうるま市と恩納村で17歳以下の女子サッカーの交流試合などを開催しました」
「3つ目は、県民に我々の外交努力を伝えていくこと。沖縄の安全保障環境が厳しさを増す中、県民から『とにかく戦争が起きないよう外交を頑張ってほしい』という声をよく聞きます。例えば、中国に対しては尖閣諸島問題や南シナ海の問題で主張すべきは主張するが、建設的かつ安定的な関係を目指しています」
―昨年11月に赴任して1年以上が経過した。改めて感じたことは。
「県民と、海外に移住したウチナーンチュとの間には、きめ細やかな絆があります。日本として中南米、アジア、アフリカの『グローバルサウス』と呼ばれる新興国・途上国との対話を深める中で、沖縄はこうした国々と、県、各市町村がそれぞれに、密度の濃い交流をしています。日本外交も沖縄のネットワークと二人三脚で展開したい」
―基地問題の難しさを感じる場面は。
「日米間では普天間飛行場と嘉手納飛行場の騒音規制の合意があり、例えば日曜日の訓練飛行は控えてもらいます、周辺地域社会にとって特別に意義のある日については、訓練飛行を最小限にしてもらうなど、話し合いを積み重ねています」
「同時に安全保障環境の厳しさが増す中で訓練や外来機の飛来もあり、特に嘉手納、普天間周辺の住民からは、騒音に関する新たな要請もいただいています」
「あらゆる機会をとらえて米軍とは対話や要請を重ねていますが、なかなか目に見える形で結果が出ないこともある。米軍の司令官クラスは地元の要請をよく理解しており、事件・事故防止の意識も高い」
―米軍オスプレイの墜落事故の波紋が広がっている。
「亡くなった乗員8人に哀悼の誠を捧げたいと思います。沖縄県、県内の多くの市長村から、哀悼の意の表明と共に、住民の声を代表し、安全性の確認が取れるまで飛行を停止することなどを求めてこられた。現在、米国は全世界でオスプレイの飛行を停止中ですが、米国には事故原因の調査結果をきちんと共有してもらいたい」
―沖縄大使の任期も後半に入ると思うが、今後の取り組みは。
「一番心掛けたいのは、『対話』の積み重ね。県、市町村、経済界、教育機関などとの対話、米軍施設・区域司令官との対話を重ねます。県民からは、沖縄に国際会議などを誘致することが、広い意味での平和外交や国際交流に役立つという意見をよくお聞きしています。将来的には国連大学の機能の一部を持つ支局のようなものを沖縄に置けないかとの意見もお聞きしています。そのためのお手伝いをしたい」
「私は石垣島マラソン、与那国島一周マラソンの10㌔の部で走った。来年2月には西表島のやまねこマラソン10㌔に参加します。再度、八重山を訪れるのを楽しみにしています」
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宮川学(みやがわ・まなぶ)第15代沖縄大使。埼玉県出身。1985年、外務省入省。大臣官房国際文化交流審議官、駐デンマーク特命全権大使などを歴任。2022年11月から現職。