木原防衛相インタビュー③ 陸自配備「安全につながる」 尖閣侵入 断じて容認せず

尖閣諸島周辺海域を航行する海上保安庁の巡視船と中国海警局の艦船(左)=2023年9月(仲間均市議提供)

 ―先島諸島は日本の安全保障でどのような重要性を持つか。台湾に最も近い与那国駐屯地の重要性は。
 「例えば中国は近年、軍事力の質量を広範かつ急速に強化し、わが国周辺海・空域での活動を拡大、活発化させている。尖閣諸島周辺では中国の艦艇が沖縄本島と宮古島間を通過して頻繁に太平洋に進出している」
 「2022年8月には中国は9発の弾道ミサイルを発射し、うち1発が与那国島から約80㌔の地点に着弾し、地域住民から脅威と受け止められた」
 「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境を踏まえれば、先島諸島を含む南西地域の防衛体制強化はわが国にとって喫緊の課題だ」
 「与那国駐屯地は、全長1200㌔に及ぶ南西地域において我が国の領海・領空の境界の近傍に位置しているなど、南西地域の防衛上、極めて重要な駐屯地と位置付けている。他方で与那国島には、防空任務に当たる地対空誘導弾部隊が未配備となっており、南西地域の防衛に万全を期すため、与那国駐屯地への地対空誘導弾部隊等の配備を計画しており、引き続き南西地域における防衛体制を目に見える形で強化していく」
 ―石垣駐屯地拡張計画の具体的な規模と、今後の日米共同訓練の計画は。
 「南西地域の陸上自衛隊部隊の空白状況を解消すべく、与那国島、奄美大島、宮古島への部隊配備を行った。令和5年3月の石垣駐屯地開設によって、南西地域の空白を埋めるため計画していた部隊配備は完了した」
 「このような部隊配備は、力による一方的な現状変更を許容しないとの我が国の意思を示し、島しょ部を含む南西地域への攻撃に対する抑止力・対処力を高めることで、我が国への攻撃の可能性を低下させる。沖縄県民を含む国民の安心安全につながる」
 「石垣駐屯地では令和6年度に自衛隊で行う警備訓練、新隊員教育、災害対処訓練等で使用することを目的に、駐屯地西側の隣接地の取得を計画している。駐屯地西側の境界が入り組んだ不整形地を整えるものでもあり、警備上の課題を改善する。具体的な面積については地権者と調整しているので、それによって決まってくる。この時点ではお答えは難しい」
 「2023年10月に自衛隊の戦術技量の向上と日米の連携強化を目的として北海道、九州、沖縄で実施した日米共同訓練『レゾリュートドラゴン23』において、石垣駐屯地で警戒監視や衛星等に関する共同訓練を実施した」
 「今般取得する土地を含め、石垣市では現時点では日米共同訓練の具体的な計画はないが、いずれにしても防衛省としては地元自治体に丁寧に説明し、適切な情報提供を行いながら、当該土地の取得、あるいは訓練を実施していく」
 ―報道によると中国軍幹部が台湾侵攻の際、尖閣諸島にも同時侵攻する意図を示唆した。この発言の意図をどう分析しているか。
 「報道は承知している。中国側の発言の逐一について、また台湾と尖閣の同時侵攻という仮定の話であるので、政府、防衛相としてコメントはしない」
 「その上で台湾を巡る問題は、対話により平和的に解決されることを期待するというのが従来から一貫した立場だ。台湾海峡の平和と安定は我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとって重要だ」
 「我が国固有の領土である尖閣諸島周辺海域では、中国海軍艦艇が恒常的に活動する中、中国海警局に所属する船舶が我が国領海への侵入を繰り返している。このような力による一方的な現状変更の試みは断じて容認できない」
 「防衛省・自衛隊としては関係省庁と緊密に連携しながら警戒監視に万全を期すとともに、中国側の一方的な現状変更の試みに対しては、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの考えのもと、毅然かつ冷静に対処していく」
 ―米軍嘉手納飛行場の民間住宅地に近い地区で米側が防錆整備格納庫の建設に着手し、無人機МQ9も配備され、住民の過重な基地負担がさらに増している。今後の負担軽減の方策をどう考えるか。
 「嘉手納飛行場では平素から戦闘機をはじめとする航空機運用により騒音などが発生しており、防錆整備格納庫の建設やМQ9の展開が加わり、基地負担が増大しているとの地元の皆様の声を防衛省として重く受け止めている」
 「騒音の問題については米軍に騒音規制措置の順守や、地元の重要な行事に配慮するよう申し入れを行い、嘉手納飛行場における航空機の訓練移転を着実に実施し、さらに住宅防音工事の助成など、地域社会との調和にかかる施策を講じることを通じて、周辺住民のご負担を可能な限り軽減できるよう努めている」
 「МQ9の展開について日米間でしっかり協議し、騒音問題に関する地元の皆様のご懸念を伝えている。住宅密集地を極力回避して飛行するほか(住宅地に近い)パパループや、旧海軍駐機場に駐機するのではなく、近隣住宅地から相当離れた場所を使用するよう、既に計画されている」
 「防錆整備格納庫の建設はパパフープで行われることから、周辺住民が懸念を抱いていると認識している。新たな格納庫は厳格な環境基準が適用されるものであり、米側からも環境面の措置をしっかり講じると説明を受けている」
 「引き続き格納庫の必要性や環境面などの措置を丁寧に説明していく。今後とも米側に対し、地域の実情を理解の上で一層の協力をするよう粘り強く働き掛け、可能な限り基地負担の軽減に努める」(終わり)

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