政府は1日、有事を見据え、自衛隊や海上保安庁が円滑に利用できるようインフラ施設を整備する「特定利用(特定重要拠点)港湾」の一つに石垣港を選んだ。港湾管理者である石垣市の中山義隆市長は市役所で記者会見し、市が策定した港湾計画に沿って、港湾整備が促進されることに期待感を示した。内閣府、海保、防衛省との間で、自衛隊・海保が民生利用に配慮しつつ、柔軟・迅速に「石垣港を利用できるよう努める」とする3項目の確認を交わしたことも明らかにした。
特定利用港湾の指定に同意した理由について中山市長は「港湾整備に前倒しで予算がつくと期待している。優先的に予算措置してもらえば、便利で利用価値が高い港湾になる」と強調。
指定による石垣港整備によって観光振興と安全保障の両立が図られるメリットを挙げ「陸路での救助や輸送が物理的な不可能な石垣市では、災害時の危機管理の観点からも港湾整備を進める必要がある」と説明した。
市の港湾計画は改定作業が進んでおり、耐震岸壁の整備、南ぬ浜町と市街地を結ぶ新たな橋設置など、物流機能の強化を目指す。
自衛隊・海保の利用を想定した新たな施設整備を港湾計画に盛り込む予定について市長は「これ(指定)によって新たな施設を整備するということではない」と否定。指定に関し、市議会野党などは市民の合意形成を求めているが「これまでの港湾計画と何ら変わらない。特に合意形成という必要はない」と述べた。
市、内閣府沖縄総合事務局開発建設部長、第十一管区海上保安部長、防衛省沖縄防衛局長が交わした確認事項では①自衛隊・海保の運用や訓練など②国民の生命・財産を守る上や、艦船の航行の安全を確保する上で緊急性が高い場合―の石垣港の円滑な利用に向け、市、海保、防衛省が連絡体制を構築し、内閣府が協力する、と申し合わせた。
中山市長は「政府と(石垣港の)『円滑な利用に関する枠組み』を設けたあとも、自衛隊や海保による平素の利用に大きな変化はない」と説明。
野党などが「指定されれば攻撃目標になる」と批判していることに対しては「そのこと(指定)のみで施設が攻撃目標とみなされる可能性が高まるとは認識していない。むしろ、自衛隊や海保の円滑な利用が可能となり抑止力を高めるとともに、災害時の迅速な展開にもつながり、ひいては市民の安全につながる」と理解を求めた。
新石垣空港の特定利用空港指定は、空港管理者の県が慎重姿勢を崩さず見送られた。中山市長は「(宮古、八重山、久米島の)5市町で一緒に声を上げていきたい」と、改めて県に同意を求める考えを示した。
県内からは国管理の那覇空港も特定利用港湾に指定された。