【解説】「本丸」は空港機能強化 県が不同意、いびつな構図

石垣港の特定利用港湾指定を受け記者会見する中山市長=1日午後、市役所

 政府が特定利用空港・港湾に県内から石垣港と那覇空港を選んだ。ただ石垣港の整備は、従来から観光インフラを強化する国の事業として比較的順調に進んでいる。石垣市が「本丸」として特定利用空港の指定に漕ぎつけたいのは、現状では機能強化のめどが立っていない新石垣空港。管理者の県は指定に慎重姿勢を崩さないが、中山義隆市長は1日の記者会見で、新空港の滑走路延長、エプロン拡張に改めて意欲を示し「県はできるだけ早く手を挙げて、予算を取りに行くくらいの姿勢で交渉してほしい」と求めた。
 新石垣空港の特定利用空港指定に対しては、玉城デニー知事の支持基盤でもある革新系の県議会与党、石垣市議会野党、市民団体から「空港が軍事利用される」「有事に攻撃対象となる」という反対の声が上がっている。指定にはインフラ管理者の同意が必要になるため、県が同意していない現状では、新石垣空港の指定は不可能だ。
 玉城知事は表向き、特定利用空港・港湾の指定が県の振興予算に悪影響を与える可能性を懸念。だが実際には、指定に反対する支持基盤の意向に配慮し、政治的意図から指定への同意を見送っていると見られる。
 石垣港に関しては特定利用港湾の指定によって今後、港湾計画の加速化が期待されるが、現時点で目新しい事業の導入が予定されるわけではない。
 一方、新石垣空港を取り巻く環境は石垣港とは異なる。滑走路延長などの機能強化に関し、現状では県が採算性を理由に一貫して消極姿勢を示し、事業化のめどが立っていない。
 同様に特定利用空港の候補になっている波照間空港、与那国空港も事情は同じ。しかし特定利用空港の指定により、各空港とも新規事業として国主導で滑走路延長などの機能強化が進む可能性がある。それだけに地元は指定を「千載一遇のチャンス」(糸数健一与那国町長)と捉える。
 しかし県政が政治的意図を背景に離島の空港整備に同意しないという、いびつな構図が浮き彫りになった。この状況が続けば「反基地」政策を盾に、県自らが離島振興を遅らせる事態が現実味を帯びる。「オール沖縄」県政の政策が県民生活に悪影響を与える事例の一つになりかねない。
 石垣市議会の3月定例会では、与党から玉城知事に対し「県政が離島振興の阻害要因」という厳しい批判も飛び出した。
 ただ記者会見で中山市長は、玉城県政への直接的な批判は回避。長崎県管理の福江空港が特定利用空港に指定されたことに触れ「長崎県に、どういう経緯で指定されたか確認したい」と述べた。
 離島空港の指定に向け、今後、長崎県の事例を玉城県政に対する説得材料にしたい考えだ。(仲新城誠)

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