【視点】改憲論議 沖縄が先導役に

 憲法は3日、施行から77年を迎えた。憲法がつくられた当時とは、国民生活も日本を取り巻く国際環境も激変したが、憲法は一度も改正されないまま現在に至り、条文と現実との齟齬(そご)が著しい。
 特に戦力の不保持を定める9条は、沖縄が他国の軍事的脅威にさらされている現状を考えると非現実的だ。県民の平和を希求する心を具体的な政策として実行するためにも、9条の改正論議を前に進めてほしい。
 憲法は終戦翌年の1946年に制定され、47年5月3日に施行された。当時の日本は連合軍の占領下にあり、国土は荒廃し、物質的にも貧しかった。国民も安全保障を真剣に考えるゆとりはなかっただろう。
 朝鮮戦争を機に高度成長期が訪れ、日本は世界第2位の経済大国に躍進した。時代は冷戦期で、日本の主な脅威はソ連だった。西側の盟主である米国との安保条約が抑止力となり、日本の国力が充実していたこともあり、日本が他国から侵略されるような事態は、ほぼ考えられない時代だった。
 そして現在、日本の国力は少子化や経済停滞で急速に衰退しており、国際社会での存在感も低下している。一方で中国は周辺国を圧倒する経済力と軍事力を手にして「超大国」への道を歩み出した。中国の強大化に伴い「台湾有事」も現実味を帯び始めた。
 ロシアのウクライナ侵略に象徴されるように、大国が小国を力でねじ伏せる時代が再来しつつある。経済大国としての威光を失った「弱い日本」は、今後の国際情勢次第で、いつ侵略を受けても不思議ではない状況だ。
 このように時代は大きな変遷を繰り返している。特に安全保障の分野において、憲法が国民の要請に応えられなくなっているのは明らかだ。
 とりわけ沖縄にとっての問題点は、憲法が戦力の不保持を定めたために、自国の防衛を本質的に米国に依存する体質が定着してしまったことだ。これが沖縄の広大な米軍基地と、県民の基地負担につながっている。
 過去に事件・事故が繰り返されてきた歴史から、県民の米軍に対する不信感はいまだに根強い。だが県民の自衛隊に対する信頼度は、以前とは比較にならないほど高い。
 自衛隊を憲法上の存在に位置付け、米軍に代わり、沖縄防衛でより大きな役割を担えるような組織に育てることは、県民の基地負担軽減に役立つはずだ。
 安全保障に関する規定が脆弱な現在の憲法は、それ自体が沖縄にとっての不安要因と言ってもいい。台湾有事が勃発すれば、沖縄が巻き込まれるのでは」という声をよく耳にするが、その懸念は的を得ていない。沖縄は巻き込まれるのではなく、最初から当事者なのである。
 中国は2022年、台湾を包囲して実施した軍事演習で、波照間島や与那国島の周辺に弾道ミサイルを撃ち込んだ。中国自身が、台湾侵攻時は沖縄も標的の一つであることを世界に表明したに等しい。
 故・安倍晋三元首相が「台湾有事は日本有事」と発言して賛否両論を巻き起こしたが、安倍氏の事実認識が正しかったことは現在、誰も否定しようもないだろう。
 改憲に関する共同通信の世論調査では、改憲の国会議論に関し「急ぐ必要がある」と回答した人は33%にとどまった。改憲を身近で切実な問題として訴えることができるのは沖縄だけだ。沖縄こそ改憲論議のキーマンでなくてはならない。

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