沖縄県が米国に設置したワシントン駐在事務所の実態が株式会社だった問題で、駐在員が県職員と同社役員の身分を併せ持つにもかかわらず、地方公務員法上必要な兼業許可の手続きが取られていなかったことが分かった。同法に抵触する可能性がある。3日、県議会(中川京貴議長)11月定例会で、溜政仁知事公室長が明らかにした。
ワシントン駐在事務所問題は大浜一郎氏(自民)が取り上げた。同法では公務員の兼業が原則禁止されており、公務員は任命権者の許可を受けなければ会社などの役員に就任できないと定める。
県が2015年に米国で設置したワシントン駐在事務所は「ワシントンDCオフィス」という名称の株式会社の形態で、駐在員2人は社長、副社長の肩書を持つ。溜知事公室長は「結果的に県職員としての身分とDCオフィス社の役員としての身分の二つを併せ持つ」と兼業を事実上認めた。
兼業の原則禁止との関係については「(同法で定める)営利企業従事許可の手続きについても提出されていない。今後速やかに進めたい」と答弁。駐在員の給与は全額県が支給しており、会社からの役員報酬はないという。
事務所を株式会社として設立することを明確に決定した文書は「確認されていない」と答弁。事務所が米国の移民局に提出した書類も、駐在員が県職員として在職していることを証明する当時の知事公室長の署名を除き、庁内の決済手続きを経ていないとした。
会社設立の決裁権者に関しては、県が支出した資本金千ドルは課長決裁で支出可能で、現地法人への業務委託の決裁は統括監決裁になっていると報告。だが大浜氏は最終的な決裁権者について「(当時の翁長雄志)知事でしょ」と指摘した。
地方自治法で県は議会に出資法人の経営状況について説明する義務があるが、これまで議会への説明はない。県が所有する株式も公有財産として登録されていないことが判明している。
溜知事公室長は、自身も10月に詳細を把握し、玉城デニー知事や副知事に報告したと述べた。事務所を存続させる考えを示した上で、今後の改善策について「遅くとも2月議会までには議会と県民に報告したい」とした。
大浜氏は、事務所が現地法人に支払った委託料から駐在員の交通費や食糧費が支出されていたことも疑問視。県側は県経費からの二重払いを否定したが、大浜氏は「一連の不可解な実態は、調べれば調べるほど隠蔽とも取れる多くの疑義がある。今や『ワシントン疑惑事務所』だ」と批判した。
玉城知事は「公務に対する県民や議会の信頼を著しく損なったことを強く反省したい。庁内の手続きや関係法令に基づいて適合性を速やかに調査し、是正を図り、県民、議会に説明したい」と陳謝した。