鳥居撤去「見直しを」 三重の塔改修で署名活動

改修計画が進められている平和記念公園内の「三重の塔」

 三重県出身の戦没者を慰霊するため平和祈念公園(糸満市)に建立された「三重の塔」の改修計画を巡り、沖縄県出身の女性が、慰霊の思いを継承しようと計画の一部を見直すよう求める署名活動を始めた。改修計画では、神社を模した鳥居などが撤去されることになっている。署名活動している浦添市出身の会社員、高里智佳さん(32)は「鳥居は三重を象徴する施設。遠い南の島で亡くなった戦没者に、せめて故郷を感じてほしいという遺族の思いがある」と、鳥居の保存を要望。慰霊のあり方を改めて問い直している。
 三重の塔は1956年、第二次大戦で亡くなった三重県出身者約5万3000人を慰霊するため同県が建立した。毎年11月、三重県遺族会が慰霊祭を開催している。
 高里さんは三重県の皇學館大学卒で、現地の知人から三重の塔に改修計画があることを聞いた。
 三重県は遺族会の要請を受け、戦後80年の節目に合わせて改修を計画。同県によると、慰霊祭で十分な式典スペースを確保し、高齢化する遺族が安全に参加できるよう、敷地内にある築山、石橋を撤去して段差をなくす。スロープを設置するため、入口の鳥居も取り壊す。
 改修費約6000万円を盛り込んだ予算は今年3月、三重県議会で可決された。
 高里さんは「「バリアフリーや安全確保のための改修には賛同している」とした上で「三重の塔の景観は、目に見ることができない『心』が可視化されている珍しい慰霊の場」と、現在の景観を評価。
 その上で「世代交代で先の戦争の記憶が薄れ、慰霊継承がしにくくなってくる。建立当時の遺族の『深い愛情』を受け継がないと、いつの日か慰霊が形骸化してしまうのではないか。せめて鳥居は残してほしい」と求めた。遺族の中にも署名活動に賛同する声が上がっているという。
 三重県は11月の慰霊祭に間に合うよう改修を進める予定だったが、一回目の入札が不調に終わり、現在、随意契約の可能性も含め今後の対応を検討している。
 県地域福祉課の担当者は「県議会でも当初は計画の見直しを求める声があったが、最終的には理解をいただいた。署名活動については把握していない」と話した。
 高里さんは署名活動をウェブサイトと紙の両方で行っており、6月23日の沖縄の慰霊の日まで続ける予定。紙の署名に関しては直接連絡するよう呼び掛けている。
 署名活動の問い合わせは沖縄県摩文仁「三重の塔」継承の会mienoto.keisho@gmail.com

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