2011年から与那国町診療所の指定管理者として町に医師を派遣している公益社団法人地域医療振興協会(東京都)が、2026年3月末で同診療所から撤退する意向を示していることが27日分かった。町に対し、医師不足が原因と説明しているという。診療所の後任が確保できない場合、町内の医師が不在になる恐れがある。
同協会は11年10月から町と診療所の指定管理契約を結び、5年ごとに更新しており、現在の契約は来年3月で期限切れになる。
町によると、今年1月に開かれた診療所の管理運営協議会で、同協会側が来年4月以降は契約を更新しないと通告した。
町は「継続してもらえないと医療が維持できない」と再考を要求。4月には糸数健一町長が東京の同本部事務局を訪れ、重ねて契約の更新を求めた。
糸数町長によると、同協会側は改めて契約を更新しない考えを示し、県に医師派遣を要請するよう提案したという。
糸数町長は27日、県庁で開かれた県と市町村の意見交換会で、池田竹州副知事らにこの問題を直訴。意見交換会の終了後には保健医療介護部の糸数公部長を訪れ、医師確保に向けた協力を要請した。糸数部長は「状況を確認する」と応じたという。
同協会は県内では現在、与那国町診療所のほか、竹富町の町立竹富診療所、町立黒島診療所、久米島町の公立久米島病院の指定管理者も務めている。だが、今年4月には国頭村の診療所から撤退している。
与那国町は診療所医師の負担を軽減したいという同協会の要請を受け、2023年度から指定管理の委託料を増額し、診療所医師を2人体制に増員したばかりだった。
糸数町長は「離島の離島である与那国町では医師の確保が一番大事で、地域医療振興協会の撤退は深刻な状況だと受け止めている。医師を2人体制にしたばかりなのに、なぜ与那国町から撤退するのかという腹立たしい思いもある」と話した。
今後に関しては「与那国を間違っても無医地区にするわけにはいかない。全力で走り回り、医師を探さなくてはならない」と強調。
竹富町西表島に県立の診療所があることを指摘し、県への医師派遣要請など、診療所の後任確保に向けた取り組みを続ける考えを示した。
町の担当者は、同協会が竹富町などの診療所の指定管理者も務めていることを挙げ「この問題は、いずれ他の離島にも波及する可能性が大きい」と危惧した。