「私は沖縄ファーストだ。沖縄の自民党は本土の自民党と違う」
4日、来県した石破茂首相を迎えた演説会で声を張り上げた自民公認の奥間亮(39)。選挙戦では参政党が掲げる「日本人ファースト」を意識し、保守層つなぎとめに躍起だった。
▽離島振興
奥間が最優先に訴えた政策は「本土の自民党」が主張する給付金などではなく、離島振興。周囲の反対を押し切って離島政策を「一丁目一番地」と位置づけ、離島住民の交通コスト軽減などを打ち出した。
全県が一つの選挙区となる参院選、知事選では通常、候補者は大票田である沖縄本島で選挙戦をスタートする。だが、奥間はあえて祖母の出身地である宮古島を第一声の地に選び、離島振興への本気度を示した。
自公の組織力を生かした選挙戦は健在。「選挙区は奥間、比例は公明」の呼び掛けを徹底し、保守系が占める全11市の市長から支援を得た。
総決起大会や打ち上げ式に参加した那覇市の知念覚市長は「私が最も信頼する人物」と奥間を推薦。石垣市では、失職した中山義隆前市長も奥間応援の街頭演説に立ち、選挙カーの運転手も務めた。
首長も含め組織力をフル稼働する戦い方は、従来の選挙であれば、自公の必勝パターンと言えた。
▽目減り
だが奥間は、支持基盤である保守層をまとめ切れなかった。
沖縄選挙区で当選した「オール沖縄」勢力の高良沙哉が26万5203票だったのに対し、奥間は23万1907票。得票率は高良の40・3%に対し、奥間は35・7%にとどまった。自公の本来の得票力とはほど遠い。
前回参院選では「オール沖縄」勢力の伊波洋一が27万4235票、自公の古謝玄太が27万1347票だった。今選挙では「オール沖縄」勢力、自公とも得票を減らしたが、特に自公の得票の目減りが大きい。
前回参院選で自公に投票した保守層の一部と無党派層が、参政党の和田知久に流れたことを示唆する。
保守層の支持が自民党から参政党など流れる傾向は、報道各社の世論調査からも明確にうかがえる。
石破茂政権の消費減税を拒否する経済政策、対中融和的な外交、選択的夫婦別姓やLGBT対応でリベラル寄りとも取れる姿勢などが疑問視された結果と見られる。
石垣市に住む有権者の1人は「今の自民党は以前の安倍晋三首相時代の自民党とは違う。不満だらけだ」と憤る。
▽拒否反応
今選挙で、保守地盤のはずの県内11市で奥間が制したのは宮古島市、石垣市、名護市だけ。多くの市で和田が得票を伸ばした結果、奥間氏が割を食い、高良がトップに立つ構図が見られた。
選挙戦でさまざまな新機軸を打ち出しながら、自公への強烈な「拒否反応」に遭い、十分な政策論争を展開できなかった奥間。敗戦が決まった20日夜「自民党への逆風を感じた。もう少し時間があったら、という思いはある。伝える力が足りなかった」と静かに語った。
(敬称略、仲新城誠)(続く)