【視点】八重山の進路左右する選択

 実績と事業継続をアピールする前市長か、刷新と路線転換を掲げる新人か。石垣市、八重山の進路を大きく左右する選択となる。
 前職、中山義隆氏の失職に伴う出直し市長選がスタートした。中山氏、前市議の砥板芳行氏による一騎打ちで、17日の投開票に向け激戦が展開される。

 2氏の政策は大きく異なるが、中でも目立つは安全保障問題に対するスタンスの違いだ。石垣市は台湾に近く、尖閣諸島を行政区域に抱えており、安全保障問題との関わりは切っても切り離せない。
 中国の脅威をにらみ、政府は陸上自衛隊の石垣駐屯地を拡大強化しており、駐屯地内では毎年のように日米共同訓練を実施している。

 中山氏は駐屯地の拡大強化に関し、状況に応じて判断する考えを示している。米軍の駐留や単独の訓練は拒否する構えだが、日米共同訓練に関しては、日本全体の安全保障に資する内容であれば受け入れるとしている。
 砥板氏は駐屯地の拡大強化は「一方的な軍拡」として認めない方針だ。石垣市での日米共同訓練も拒否する。有事をにらみ、政府が進める住民避難計画に関しても、全島避難は非現実的だとして、対話による平和外交と有事の回避を政府に訴える。

 尖閣諸島問題に関し、中山氏は毎年、周辺海域での視察を行い、尖閣諸島の実効支配強化に向けた取り組みを政府に要望してきた。
 砥板氏は尖閣周辺海域の視察が中国との緊張を激化させると懸念。尖閣が市の行政区域であることのアピールは続けるものの、政府への上陸申請などは行わない考えだ。

 八重山は事実上、日本の対中最前線としての役割を担わされている。過去の石垣市長選では自衛隊配備の是非が争点になり、配備を容認した中山氏の勝利が駐屯地の開設につながった。
 その後も政府と基本的に共同歩調を取って来た中山氏だが、砥板氏は住民不在の軍事要塞化は断固拒否する考えで、市長選の結果が政府の安全保障政策に影響を与えるのは避けられない。

 台湾航路開設、ゴルフ建設といった中山市政の主要政策が継続されるかも争点だ。市民生活に直結するだけでなく、石垣市の将来像にも関係する問題だ。
 当初は来年2月の予定だった市長選が大幅に前倒しされたのは、市議会の不信任決議で中山氏が失職したからだった。
 その後、不信任に賛成した与党市議らが再び中山氏の支持を表明したことで、中山氏が戦略的に不信任決議を受け入れ、出直し市長選に臨んだことが明らかになった。
 不信任のきっかけになった行政の不手際も含め、選挙に至るまでの異例とも言える経緯を、有権者がどう理解するかも問われる。

 前回2022年と同じ候補者同士の一騎打ちで、新鮮さに欠ける印象は否めない。選挙期間中は八重山最大の伝統行事豊年祭が行われるが、台風の接近も予想される。
 政策論争が低調であれば関心の低下に拍車が掛かってしまう。積極的な周知など、投票率を低下させない工夫が望まれる。

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