石垣市の中山義隆前市長(58)=自民、公明推薦=の失職に伴う市長選が10日告示され、無所属新人で前市議の砥板芳行氏(55)と、5選を目指す中山氏が立候補。市政史上初となる出直し選の火ぶたを切った。投開票は17日。3年前の前回2022年市長選と同じ候補者の一騎打ちで、中山氏は課題解決に向けた市政継続、砥板氏は長期政権の刷新を掲げた。
中山陣営は午前8時から、砥板陣営は8時半から、それぞれ市内の選対事務所で出陣式、出発式を開き、多数の支持者を動員。
砥板氏は「市政混乱、市民不在の長期政権を変える」と改革を訴えた。
中山氏は「未来のために頑張る。石垣を前に進めよう」と実績をアピールした。
砥板氏、中山氏とも第一声を終えるとさっそく選挙カーに乗り込み、島内各地での遊説へ出発した。
中山氏は過去4回の市長選と同じく自公選挙協力体制を構築。経済界からも従来通りの支持を取り付け、組織力を生かした選挙戦を展開している。
砥板氏は革新系の政党や労働組合などに支えられる。八重山では米軍基地問題は争点化されないため「オール沖縄」は標ぼうせず、玉城デニー知事の来援も仰がない方針。
両者はそれぞれ保守・中道と革新の組織票をバックにしており、がっぷり四つの激戦が予想される。支持固めと無党派層へのアプローチがどこまで進むかが勝敗の分かれ目になりそうだ。
選挙戦では、台湾基隆―石垣定期フェリー航路開設、ゴルフ場建設など「中山路線」継続の可否が主要争点。
石垣市は台湾に近く、尖閣諸島を行政区域に抱えており、選挙結果は政府の安全保障政策にも影響を与える。
陸上自衛隊石垣駐屯地の増強をはじめとする安全保障問題への対応でも中山氏は柔軟姿勢、砥板氏は慎重姿勢で、両者の差異は大きい。石垣市では市長が5選された前例はなく、中山氏の多選の是非も問われる。
石垣市議会は6月、国保特別会計を巡る文書改ざんをきっかけに中山氏の不信任決議を可決。中山氏が議会を解散せず自動失職し、市民の信を問う意向を表明したため、出直し市長選実施が決まった。
中山氏は4期目の途中で、任期満了に伴う市長選は来年2月に行われる予定だった。
砥板氏は野党勢力の市民団体に推され、22年市長選に続く再出馬となった。