【解説】沖縄の現状に一石 自衛隊への政治的攻撃が横行

 沖縄県議会が8日可決した「自衛隊及び隊員とその家族に対する差別的な風潮を改め、県民に理解と協力を求める決議」は「平和運動」「県民感情」といった美名を隠れみのに、自衛隊への政治的な攻撃が横行する沖縄の現状に一石を投じる意義がある。

 自衛隊の活動を批判することは憲法で保障された政治活動の自由の範囲内だが「沖縄全島エイサーまつり」で顕在化したように、隊員の地域行事への参加まで阻止するのは「村八分」を想起させ、隊員の人格を傷つけかねない行為だ。
 県議会の決議が、こうした行為を「地域社会の成熟と多様性、共生の精神を損なうもの」と明確に指摘したのは当然だ。

 自衛隊の地域行事への参加に対しては、革新系の団体を中心に、沖縄全島エイサーまつり、ハーリー、石垣島まつりなどに関して抗議の動きが続く。ほかにも最近、本島で自衛隊の音楽隊がコンサートを開催しようとしたところ、公的施設の使用を断られた事例があった。
 革新市政時代の石垣市でも、海自の艦船が休養のため石垣港に入港を申請しても、市長が拒否することが常態化していた。

 「抗議」と「差別」の線引きが難しいのは事実だ。かつては当然視されていた抗議行動も、社会情勢や価値観の変化で「差別」とみなされるようになることもあり得る。
 沖縄戦を経験した県民感情が複雑なのは事実だが、現在では自衛隊に対する県民感情は大きく好転。駐屯地を抱える自治体でも、訓練を「戦争準備」などと批判する声は少数派だ。

 先述したような自衛隊に対する抗議活動は、特定の職種の人たちをことさら不平等に扱うことにほかならず、現在の社会情勢や価値観からすると、もはや正当性を欠く。民主主義社会である以上、国家機関に抗議する権利は当然誰にでもあるが「村八分」のように、隊員に対する個人的攻撃につながりかねない手法を選ぶのは時代錯誤だ。

 県議会で決議に反対する「オール沖縄」勢力の県議は、決議について「異論や批判を差別と決めつけるのは戦前を思い起こさせる。社会に同調圧力を生み、県民を分断し、民主主義の根幹を揺るがす」と発言した。
 だが「オール沖縄」勢力自身が、主に本土側から寄せられる反基地運動への批判を「沖縄差別」「沖縄ヘイト」と断じ、波紋を巻き起こしてきた。
 これまで「差別」という言葉を乱用して県民を分断してきた政治勢力に、決議に反対する資格があるのか。決議を巡る対応は「オール沖縄」勢力にとってのブーメランになったとも言えそうだ。(仲新城誠)

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