ロシアの侵攻を受けているウクライナで、電力、エネルギー、通信、金融などの重要インフラを命がけで守り、維持している企業人たちの奮闘を紹介している。
ロシアはウクライナの重要インフラへの攻撃を続けており、著者が報告するデータによると、2022年10月~2023年4月にエネルギー業界に仕掛けられた攻撃の回数は1200回に達している。「どの火力・水力発電所も、何らかの損傷を負っている状態」とする。
23年6月時点の発電能力は戦前の半分まで下がり、電力・エネルギー業界の損害は国連開発計画(UNDP)の推計で日本円にして1兆4千億円以上の100億ドルに達するという。
ウクライナのエネルギー大手DTEKの社員たちは、危険な状況の中で修理作業に従事しており、経営者が「死傷した従業員のチェックで1日を始める」という現状。
だが破壊された施設の修理を続ける技術者は「少々無力感に襲われる。だが必要であれば戻って来るし、ケーブルを毎日でも直すさ。人々が明かりを必要としているからね」と話す。
著者は、この本のキーワードを、打撃を受けても素早く立ち直る能力「レジリエンス」(抗堪性)だとする。
台湾有事の危機が迫り、日本の重要インフラがいつ狙われてもおかしくない状況が続く。
ウクライナの失敗と苦労を学ぶことで「日本の重要インフラのレジリエンスを向上させ、国家安全保障と経済安全保障双方の強化に繋がるはずだ」と期待する。
同書は産経新聞出版刊。1210円(税込み)。