晩秋から初冬にかけて開花するキクが咲き出した。キク科の多年草で、日が短くなるころに咲く短日性植物として知られる。
花色も赤、白、ピンク、黄色と多彩。民家の庭先では、びっしりと付いたつぼみが次々と花開き、辺りにほのかな香りを漂わせている。
「菊香る師走」というようにキクは師走を彩る風物詩でもある。昔から人々に親しまれてきた植物で、サクラとともに日本の国花としても有名。
奈良時代の万葉集や平安時代の古今和歌集にもキクの高貴な美しさが詠われていて、いにしえからキクが人々にいかに愛されてきたかが分かる。
八重山ではかつて正月が近づくと、小菊が咲く庭に白砂をまく風習があった。昔からの習慣が残る離島や地域ではいまも、その懐かしい光景がみられる。(文・写真 南風原英和)