米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、県が国の工事差し止めを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部(大久保正道裁判長)は5日、訴えを却下した一審那覇地裁判決を支持し、差し止めを認めない判断をした。
政府が辺野古沿岸部への土砂投入を14日に予定する中、移設阻止を掲げる玉城デニー知事にとって厳しい結果となった。県は最高裁への上告を検討する。
日米両政府は1996年、市街地に隣接する普天間飛行場の返還で合意。日本政府は危険性除去を強調し「辺野古が唯一の解決策」との立場だ。玉城知事は「移設先が沖縄でなければならない軍事的、地理的必然性はない」としている。
今回の訴訟は、故翁長雄志前知事の県政から続く国との法廷闘争の一環。県側は、国が県漁業調整規則に反し、無許可で海底の岩礁破砕を伴う工事をしていると主張した。国側は「許可は不要だ」と反論していた。
判決で大久保裁判長は、自治体は条例や規則に従わせるための訴訟を起こせないとする最高裁判例を踏まえ「県の訴えは裁判の対象にならない」と指摘。3月の那覇地裁判決と同様、差し止めの是非について実質的な判断はせず、県側の控訴を棄却した。
玉城知事は「司法の任務を放棄したと言わざるを得ず残念」とのコメントを出した。
県は8月、工事の違法性を理由に辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回した。これに対し、防衛省沖縄防衛局が撤回の効力停止を申し立て、国土交通相は10月、認める決定をした。政府は今月3日から埋め立て用土砂の搬出作業を始め、書類の不備で一時停止したが、5日に再開した。