また、桑江市長が名護市の事例で指摘した住民の「分断」は、今回の県民投票でも既にあらわになっている。米軍普天間飛行場の辺野古移設ではなく「辺野古米軍基地建設のための埋め立て」の賛否を問うという設問に対し、これだけの違和感や反発が噴出する現実は、今回の県民投票がそもそも無理筋であることを示しているようだ。
県民投票を実施するか最終判断を先送りしている中山義隆市長は「県民投票は県民の意思を表すための手段のはずだが(辺野古移設の)反対運動を成功させるための動きに見える」と述べた。県民投票が辺野古移設反対派の政争の具になっているのではないかという疑念である。
具体例として中山市長は、県民投票を中立的な立場で実施するはずの玉城デニー知事が辺野古移設反対派と同調していることを挙げた。
県民投票で反対多数を獲得し、辺野古移設阻止の足がかりにしたい玉城県政にとっては、全市町村での実施を実現できるか、まさに正念場だ。
今後、県民投票を実施しない市に対しては、地方自治法に基づく是正要求などの措置が想定される。宜野湾市では、市に対する損害賠償請求訴訟の動きも始まった。行政やメディアも巻き込んだ有形無形の働き掛けが強まっているのであり、最終的に5市が翻意する可能性も完全に消えたわけではない。その意味でも、玉城県政の本気度が試されている。