当時の舟を推定して復元し、旧石器時代に大陸から日本列島に渡ってきた祖先の大航海の一部を再現する「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」(主催・国立科学博物館)で、6月25日から7月13日の間に丸木舟で出航することが決まった。航路は台湾東部海岸の烏石鼻から205㌔先の与那国島を目指す航路で、出航日は天候と海況を踏まえて判断される。
プロジェクトの代表を務める同館の海部陽介人類研究部・人類史研究グループ長が16日午後、八重山日報社を訪れて報告し、プロジェクトをPRした。
台湾から与那国島までの直線距離は110㌔だが、秒速1㍍~1・5㍍で流れる黒潮を考慮して南から出航する。
到着までの推定日数は2~3日。日本人、台湾人を中心にカヤックのガイドなどの経験豊富な漕ぎ手5人が選出され、移住を想定し、男女混合で行われる。
食料や飲料水も全て古代舟を推定した丸木舟「スギメ丸」に積み、旧石器時代に存在しなかった地図・コンパス・時計などは持たない。出発地の海岸から与那国島は見えないため、星や風を頼りに方角を割り出しながら航行する。
「スギの女神」という意味をもつスギメ丸は能登産スギを石斧で加工し、2017年から19年に日本で製作された。全長は755㌢、最大幅71㌢、高さ55㌢、重さは推定350㌔。
16年2月にプロジェクトを立ち上げて以来、草束舟、竹筏舟での実験・研究が重ねられ、その利点と限界から、丸木舟の可能性が検証された。
昨年10月には丸木舟で千葉県の館山から伊豆大島沖までの26㌔を遠征し、台湾から与那国島間の黒潮とほぼ同等の秒速1㍍~1・7㍍で流れていた幅13㌔ほどの黒潮の帯を横断した。丸木舟は草束舟・竹筏舟と比較して不安定で転覆し易い性質があるものの、それらを上回る速度と操作性が発揮されるという結果を得ている。
今後は台湾での直前トレーニング合宿なども行い、本番に向けて必要な準備を整える。
海部氏は「成功、失敗、挑戦後のことは考えていない。とにかく今回の挑戦に徹するだけ」と意気込みを語った。