北方領土の択捉島に残されていた墓碑銘にこんなことが書いてあった。「忍山良耐居士」と。僕はここから、開拓のために血と汗を流してきた日本人がいたということを強く感じる。これは北方領土に限らず、竹島でも、尖閣諸島でも、全く同じなんだ。
要するに、領土問題をないがしろにするということは、先人たちが流してきた「日本人の血と汗の開拓の歴史」を消すことに等しい。それは日本人として最も切ない話だと思う。
だから、例えば尖閣諸島であれば、開拓者である福岡県出身の古賀辰四郞(1856―1918)の苦難や苦労を日本人全体で共有することが大切だと思う。そのためには黙ってないで、叫ぶときは叫ぶ、言うべき時は言う必要がある。そこに日本人としての自尊心があると思うね。(里永雄一朗)
[プロフィール]
山本皓一(やまもと・こういち) 1943年、香川県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。雑誌の写真記者を経て、フリーランスのフォト・ジャーナリストに転身。独裁国家の北朝鮮、崩壊直前のソ連、日本の国境の島々を踏破するなど、世界各国をルポルタージュしてきた。日本写真家協会とペンクラブの会員。