タレント出身らしく、玉城デニー知事のパフォーマンス能力は高い。人懐っこく、愛されるキャラクターは高い県民人気の源だ。だが仕事の成果はどうか。米軍普天間飛行場の辺野古移設阻止に「頑張っています」というアピールだけで4年間の任期が過ぎてしまわないか、と心配になる。
玉城知事は27日、ハガティ駐日米国大使、シュナイダー在日米軍司令官、スミス在沖縄米軍四軍調整官、ケプキー在沖縄米総領事の4人に書簡を送り、辺野古移設阻止を訴えたと発表した。
辺野古沿岸について「新たにマヨネーズのような状態と指摘される軟弱地盤の存在も確認されている。地盤改良工事が追加されることは、県は移設までに13年以上かかると見込んでいる」「県は、全体の総事業費が最大で2兆5500億円になると試算した」「仮に辺野古新基地が完成したとしても、地盤沈下が続き、滑走路等の基地施設に大きな危険が生じる」「いったん地震が発生すれば滑走路部分以外が液状化し、軍事基地として使えなくなる可能性もある」などと書き連ねた。書簡をトランプ大統領に届けることも求めた。
軟弱地盤の存在は政府も確認したが、改良工事の有効性に関する記述は県の一方的主張であり、日本政府の見解とは異なる。書簡は知事の公印が押されている公文書だが、客観性を欠く。
米国政府の交渉相手は県ではなく、日本政府なのだから、この書簡が米国政府に対して説得力を持つとは考えにくい。玉城県政にとって、書簡は米国向けというより、あくまでメディア向け、支持者向けではないか。
政治家が有権者に発信する手段として、最近とみに注目されているのがツイッターだ。トランプ大統領は、メディアを通さずに重大発表を次々とツイートすることで知られる。
ツイッターを活用することでは、玉城知事も人後に落ちない。25日には、こんなツイートが話題になった。
「『基地負担軽減担当の官房長官、地元自治体と米軍とのパイプ役の防衛大臣、地位協定担当の外務大臣たちは任期中は嘉手納や宜野湾に住んでそこから登庁するべき。地元の肌感覚を身近に覚えることが大事』このような声を実はよく耳にする。基地に賛成も反対も関係なく。実感を知って欲しいということ」
辺野古移設で対立する政府を痛烈に批判する内容に、読者の反応は「私たちの声を代弁してくれた」と歓迎の声が上がる一方「知事も、いろいろな問題を抱える自治体に実際に住んでみてください」と批判もあった。
奔放な知事の発信はそれなりに面白いが、気になるのは、県のトップが個々の大臣を罵倒する発言をしても、支持者は喝采こそすれ、政府との関係改善には何の足しにもならないことだ。辺野古を巡る反目はともかく、その他の分野では可能な限り政府と連携しなければ、沖縄振興は覚束ない。
知事は今後、東京などで辺野古反対を訴えるシンポジウムの開催を予定しているようだ。米国、中国、台湾と、外遊も繰り返している。30日には知事肝いりの「万国津梁会議」が発足し、有識者が海兵隊撤退などを議論する予定だ。
いずれも話題性は高い。メディアも大きく扱うだろう。だが究極的に求められるのはパフォーマンスではなく、県民生活の向上につながる「結果」であることを忘れてはならない。