「第56回道徳教育研究会 道徳教育の新たな充実をめざして」(主催・公益財団法人モラロジー研究所)が27日午後、石垣市の大濱信泉記念館多目的ホールで開催された。同会の石垣島会場での開催は初めて。植草学園大学名誉教授の野口芳宏氏(83)が講師として、現在の道徳教育のあり方を分析し、「『考え、議論する道徳』と言われるが、未熟な子どもにさせることではない。考え、議論する前提として何を教えるかが大事」と訴えた。 野口氏は教育基本法第1条の「人格の完成を目指す」ことが教育の最重要目的とし、「子どもの本質は未熟・無知。しばしばわがままで自分勝手。教えるべき事は教え、禁止すべき事は禁止して鍛えるべき」との子ども観を示した。
模擬授業で戦前・戦後を通じ、憲法に一貫して明記された第1章「天皇」を取り上げ、「なぜ戦争に負けたのに変わらないのか」との問いから授業を展開。
「偉人に学ぶ」として、敗戦直後の昭和天皇とマッカーサー元帥との会見を題材に、「天皇に帰すべきではない、死を伴うほどの責任」を引き受け、国民の飢餓を心配して米国に食糧援助を求めた昭和天皇を紹介した。
「マッカーサーは天皇が国民を愛していると骨の髄から知らされ感動し、占領政策を順調に進めるため、米国議会で天皇の処刑に反対した」と指摘し、「昭和天皇の真心が日本の歴史を変えた。敗戦国なのに天皇が憲法の第1章にくるのは納得できるし、子どもはこういう事実を知った時に自己肯定感(自分への自信や誇り)をもつ。なぜこの話が教科書にないのか」と憂えた。
また、「子どもの主体性、個性を尊重」する教育観に対し、「米国は日本が二度と世界をリードしないよう、占領期に日本の価値観を崩した。主体性重視はその名残」と指摘。
「誰も反対できない言葉で、じわじわと教育がおかしくなっている。個性重視などの甘い言葉で浮かされると、わがまま者にしか育たない」と過度に未熟な子どもの主体性を尊重する危険性を訴え、「学校教育のあり方を根本的に考えないといけない」と強調した。